『ザ・ノンフィクション』スマホ没収、丸刈りの過酷な修行生活「ボクらの丁稚物語 ~泣き虫同期 4年の記録~ 前編」
日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月14日は「ボクらの丁稚物語 ~泣き虫同期 4年の記録~ 前編」というテーマで放送された。
あらすじ
社員を怒鳴りつけようものならパワハラ、モラハラと騒がれるこの令和のご時世に「丁稚制度」を敷く、横浜の秋山木工。一点物の高級家具を手掛ける秋山木工に入社すれば、ケータイも恋愛も、酒もタバコも禁止で、家族との連絡も「手紙」になる。さらに男女の区別なく、みんな丸刈りだ。しかしそのような厳しい条件の中でも秋山木工の門をたたく若者はあとを絶たず、2017年は5人が入社したが、その競争率は10倍だったという。しかし入社後も半数は脱落してしまうという。
厳しい秋山木工の丁稚制度だが、これは昭和18年生まれの秋山利輝社長自身が丁稚奉公で鍛えられた経験による。秋山は戦中戦後の混乱期において、鉛筆やノートが買えない貧しい家庭で育ち、自分の名前が書けるようになったのは中学2年生だったという。その後秋山は、16歳から5年間丁稚修行し家具職人となり、皇室の仕事を請け負うまでに職人としての技術を極めていった。なお、秋山木工は「一人前の職人になる」のがゴールであり、会社にいられるのは8年までとなる。
2017年春に秋山木工に入社したのは5人。入社半年で1人が脱落し4人になっていた。年若ながら優秀でリーダー格の久保田は、シングルマザーの家庭で育ち、最初に作った家具は母にプレゼントしたいと話す。涙もろい佐藤はI型糖尿病を幼少期に発症。低血糖状態になると意識が混濁してしまうことがあり、パイロットの夢を諦め、手先の器用さを生かし職人を目指す。
加藤は代々続く造園業の実家を継ぐべく、職人を引っ張る人間性を身につけようと修行に打ち込むも、ミスで叱られがちなところもある。内藤は京都大学で建築を学ぶが勉強の意義を感じられず、引きこもりになり休学。自分を変えるために中退し、父母の勧めで秋山木工へ進む。
濃密で過酷な丁稚生活は時に軋轢を生む。1年後、4人に浜井という後輩の女性丁稚ができるが、浜井は1年たたずに退社。さらに久保田も退社を選んでしまう。
丁稚のストレスライフは、スマホがないから?
17年に入社した5人の丁稚は、今回の番組終了時点(おそらく入社から1年と少し)で、半数近い2人が退社している。過酷な競争をくぐり抜け入社できたのに、辞めてしまった背景には修行そのものの厳しさもあったと思うが、個人的には「携帯を持てない」ことも大きかったのではないかと思った。
丁稚は共同生活で、スマホは没収、家族との連絡は「手紙」のみになる。昭和18年生まれで、そんな家電などない時代に鍛えられた秋山社長にしてみれば、それは当然のことだろうが、今のデジタルネイティブ世代が「スマホ抜き」で生活をするのはかなりしんどいように思う。
17年入社組では、久保田が加藤に対し厳しめに当たり、加藤がむっつり押し黙るなど「じっとりと険悪」な雰囲気が伝わってきた。こんなときスマホがあれば、互いにSNSで愚痴をこぼしておくなどの息抜きはできたかもしれない。スマホとは関係のない回だったが、スマホが現代生活に果たす役割の大きさを逆に感じてしまった。もちろん、スマホがあればあったで、生活がだらけてしまう、里心がついてしまうなどの弊害もあるのだろうが。
関連記事
『ザ・ノンフィクション』うつ病を抱える夫、支える妻の生活「シフォンケーキを売るふたり ~リヤカーを引く夫と妻の10年~」
『ザ・ノンフィクション』女たちの献身を当然として受け取る”息子“「母さん ごめん ダメ息子の涙 ~六本木キャバクラボーイ物語~」
『ザ・ノンフィクション』警察沙汰を起こす小学生の実像とは「悪ガキとひとつ屋根の下で ~夢の力を信じた10年の物語~」
『ザ・ノンフィクション』覚醒剤で服役12回、結婚4回の男の実像とは「母の涙と罪と罰 2020 後編 ~元ヤクザと66歳の元受刑者~」
『ザ・ノンフィクション』再犯率8割、50代以上の覚醒剤依存者の現実「母の涙と罪と罰 2020 前編 ~元ヤクザ マナブとタカシの5年~