サイゾーウーマン芸能韓流R-18映画『お嬢さん』女性たちの連帯 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 R-18韓国映画『お嬢さん』が“画期的”とされる理由――女性同士のラブシーンが描いた「連帯」と「男性支配」からの脱出 2021/02/05 19:00 崔盛旭(チェ・ソンウク) 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 『お嬢さん』「母性愛」でつながり「男根」を破壊した秀子とスッキ 第1部でまず強調されるのは、秀子とスッキの「母性愛」的な関係性だ。映画の冒頭、捨てられた赤ん坊を拾って面倒を見、その後売りさばく生活を送っているスッキはすでに母親的な役割を果たしており、社会から隔絶された世界で1人では何もできない秀子には、まるで赤ん坊のように接する。 スッキに頼りっぱなしの秀子も、実は彼女の演技であったことが後から明らかになるのだが、母親を早くに亡くしたという共通点を持つ2人が、「あなたの母はきっとあなたを産んでよかったと思っているはず」というスッキの言葉を通して真の感情を芽生えさせることからも、彼女たちがまず「母性」によって連帯していくことがわかる。 そして、時間をかけて反復的に描かれるセックスシーンが、素晴らしいエロティシズムにあふれているのは作り手たちの力量だが、手を握り合うといった行為を見せることで、2人の連帯感がより伝わってくる場面になっている。 また、最初は女同士がだまし合っているように見せるからこそ、それが次第に「女性対男性」の構図に変化し、最終的には女が男に気持ちよく勝利する結末に痛快さを感じるという、映画自体の構成の魅力も大きいだろう。それまで完全に男性の支配下に置かれていた秀子とスッキは、連帯することで、上月や藤原との関係をぶち壊して転覆させ、2人だけの自由を手に入れる。そしてその過程で、上月の春画コレクションや「蛇の像」を叩き潰し、藤原の「指」は切断され、それぞれ「男根」のメタファーともいえるものが具体的に破壊されていく。 こうしたさまや、だまし合いのゲームにおいて次第に女たちが主体的な地位を確立し、男たちをバカにしながら勝利を収めるという展開を考えると、2人の同性愛的連帯は、もはや必然とさえいえる気がする。上月の家から脱出する際の「私の人生を壊しに来た救世主、私の珠子」という秀子のセリフは、そうした2人の関係性を決定的に示すものである。 パク・チャヌクは、男性による一方的な性的視線を見事に転覆させる女性たちの反撃を描くための装置として、同性愛を必要としたのだろう。だからこそ本作は、スキャンダルなベッドシーンの話題を超えて、フェミニズムに根差した議論が活性化したのである。 次のページ 韓国で「日本のポルノ」が好まれる社会的背景 前のページ12345次のページ 楽天 お嬢さん【Blu-ray】 関連記事 イ・ビョンホン主演『KCIA 南山の部長たち』の背景にある、2つの大きな事件――「暴露本」と「寵愛」をめぐる物語『パラサイト 半地下の家族』を理解する“3つのキーワード”――「階段」「におい」「マナー」の意味を徹底解説カン・ドンウォン主演『新感染半島』は“分断された韓国”を描いた? 「K-ゾンビ」ヒットの背景を探る『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督が尊敬する“怪物”――キム・ギヨンが『下女』で描いた「韓国社会の歪み」「セウォル号沈没事故」から6年――韓国映画『君の誕生日』が描く、遺族たちの“闘い”と“悲しみ”の現在地