[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2021年2月8日号

いとうまい子、遺伝子の研究者になっていた! 東大に通う日々語るも……「更年期障害」と結びつける「婦人公論」の論法

2021/02/06 16:00
島本有紀子(ライター)
「婦人公論」2月8日号(中央公論社)

 現在発売中の「婦人公論」(中央公論社)2月8日号、特集は「何歳からでも、やりたいことを」です。最初に回答者91人、平均年齢56.8歳という読者アンケートの結果が紹介されていて、それによれば「挑戦してみたいことはありますか」との問いに、9割超えの85人が「はい」と回答しています。

 56.8歳なんて、前号に登場していた今年99歳になる瀬戸内寂聴先生と比べれば、子どものようなもの。前向きな姿勢あふれる今号、さっそく中身を見ていきましょう。

<トピックス>
◎アイドルだった私が遺伝子の研究者になるなんて いとうまい子
◎「社交ダンス」の魔力で身も心も磨かれて 加藤タキ・市毛良枝
◎女たちの言い訳 いつだって、やる気はこうして阻まれた

若返り研究者・いとうまい子の更年期とは

 特集に合わせて今号では、2018年に63歳で芥川賞を受賞した若竹千佐子さん(1954年生まれ)、著書『90歳セツの新聞ちぎり絵』(里山社)が話題になった木村セツさん(92歳)など、“年齢にこだわらず挑戦して成功した女性”が多く取り上げられています。その中で異彩を放つのが、女優・いとうまい子(56歳)のインタビュー「手に入れたのは壮大な趣味 アイドルだった私が遺伝子の研究者になるなんて」でした。

 いとうは、「社会に対して何か恩返しがしたい」と、10年に早稲田大学の人間科学部健康福祉学科、eスクール(通信教育課程)に進学。ロボット工学を学んだ後、基礎老化学の博士課程へ。博士課程在籍5年となる現在は、東大の研究室と共同でサーチュイン遺伝子の研究をしているといい、「ほぼ毎日、東大のラボに通って、20代の学生たちと一緒に、細胞培養の実験を行っています。50代になった私が、毎日東大に通うことになるなんて!」と語っています。


 博士課程まで極めるとは、なかなかできないこと。まさに読者の憧れの存在だと思いますが、本人は「壮大な趣味を手に入れた感覚」と自然体。「新しい刺激に触れていたせいか、ホットフラッシュを数回感じたくらいで、それ以外は更年期の不調も感じないまま現在に至っています」「若者と過ごすことで、自分の気持ちも自然と若返る」とも明かしています。

 現在の研究テーマは「どんな食品がサーチュイン遺伝子(若返り遺伝子)を活性化するのか」だそうですが、記事ではそういった科学的な観点よりも“新しい挑戦や若者との交流で若返ることができる”といった精神論的な方向からスポットが当たっているように読めました。

 「挑戦=進化」ではなく、「挑戦=更年期障害の解消、若返り」となる部分に「婦人公論」らしさを感じた次第です。

婦人公論 2021年 2/9号 [雑誌]