カルチャー
鳥居りんこさんインタビュー【前編】

毒母の介護、最後は“意地”だった。「娘がいて“便利で”よかったわ」「つまらない人生でした」母の辛辣な言葉に、私は……

2021/02/27 17:30
サイゾーウーマン編集部
写真ACより

 皆さんは、これまでの人生で「看取り」を経験したことがあるだろうか? 

 「看取り」とは、高齢者が自然に亡くなるまでの過程を見守ることを指し、超高齢社会の現代においては多くの人が経験するものと考えられるが、家族が年老い、死んでいく姿を“まったく想像できない人”は少なくないはず。もしくは、死を目前にした家族を皆で囲みながら、感謝の言葉を伝え合いながら、穏やかな時間を過ごす……そんなドラマのようなワンシーンを思い浮かべる人もいるかもしれない。

 しかし、親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)を上梓したエッセイスト・鳥居りんこ氏は、「看取りはもっと過酷なものです!」と語る。本書には、両親を10年以上にわたり介護し、看取った実体験を元に、介護・看取り初心者へのアドバイスをつづっているが、その内容は確かに過酷そのもの。そして、読者に“死への向き合い方”を考えさせる1冊となっている。

 今回、サイゾーウーマンでは、鳥居氏にインタビューを行い、その介護体験を振り返りつつ、親を看取ることの難しさを語っていただいた。

私の母は女王様、子どもは使用人だった

親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)

——鳥居さんは、2006年にお父さまが心筋梗塞で倒れてから、介護生活をスタートされたそうですね。

鳥居りんこ氏(以下、鳥居) そうですね。父はその後、末期の肺がんと診断され、08年に息を引き取りました。一方の母は、今から20年前、いわゆる“目にくる脳溢血”で突然片目が見えなくなってしまい、病院への付き添いが始まりました。思えば、その頃から「介護がスタートした」といえるかもしれませんね。そして12年には、パーキンソン症候群の一つである難病「進行性核上性麻痺(PSP)」と診断されたのですが、病名がわかるまでが大変でした。ガラス窓に頭から突っ込むなど、明らかにおかしな行動が増え、母から目が離せなくなったのに、病院へ行っても「老化です」と言われてしまって……。その後、13年に介護付き有料老人ホームに入居し、17年に亡くなりました。

——簡単に介護歴を振り返っていただいただけでも、その壮絶さがひしひしと伝わってきます。

鳥居 私の母は、いわゆる毒母。昔からまるで女王様のように「いろいろしてもらって当たり前」という態度で、子どもは“使用人”。母の意に反することをしてしまうと、罵倒されました。まぁ、母からすると「正しいことを指摘した」だけなのでしょうが。片目が見えなくなった頃から、その傾向はさらに強まっていきましたね。

 そんな中、介護のキーパーソンだった姉が病気になってしまい、私がメインで引き受けざるを得ない状況に。家事と子育て、仕事、介護と、目まぐるしい日々に突入しました。夫にとっては実の親ではないため「介護を手伝って」とは言えなかったし、当時中学生だった下の娘をしっかり見てあげることもできず、自分の家族がバラバラになっていくのを感じました。

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