「24年前、男性用の抱っこひもはなかった」「別れても一緒に子どもを育てる」離婚を取材するライターが語る、子育てと社会の変化
上條 教科書やドラマの描写も変わりますね。娘がアメリカ留学をしていたことがあるのですが、向こうでは離婚やステップファミリーも多かったと聞いています。子どもたちの世代がドラマとか漫画を通して知るようになれば、変わっていくのかなと思います。
西牟田 1979年の映画『クレイマー、クレイマー』では、日本の親権にあたるものを争っていて、どっちが面倒を見るのかやりとりし、母親が親権を諦めるが、交流は続く、という話です。2019年の映画『マリッジ・ストーリー』では、共同で育てること自体はすでに前提としてあって、生き別れになるというステージでは全然ないんですよね。日本も面会交流調停の増え方を見ても、別れても一緒に子どもを育てるという動きになってきていると思います。法制化はいつ実現するかわからないですが、日本でも『マリッジ・ストーリー』みたいなドラマは出てくるだろうし、楽観視しています。
上條 私自身も学びの過程なのですが、「FRaU」(講談社)の連載「子どものいる離婚」を通じて伝えたいことは、「失敗しても、やり直せるよ」ということです。離婚を勧めるのではありません。長い結婚生活の後で、ひとりに戻るのは心細かったけれど、取材する中で、離婚が思っていたほど怖くないと気づいたのです。
お金の問題は重要で、パートや扶養に関わるので離婚をせめぎ合ったりするし、旦那さんから「離婚してくれ」と言われる人もいます。どん底から立ち直っていく人もいます。何歳でも頑張り直すことはできるし、「幸せになろうよ」って思います。失敗を肯定したい気持ちが強くて「離婚したっていいじゃない」という気持ちも、「しなくて済むならしないほうがいいよね」という気持ちもあります。結婚生活を続けながら失敗を回復していくこともできたかもしれない。
西牟田 本の感想で、「自分は絶対会わせないと思っていたんだけど、いろんな人のケースを読んで、自分が偏っていたと知った。俯瞰できてよかった」「渦中のとき読んでたら、もっと早く楽になったかも」という声もあって、別れようか悩んでいる人はもちろんですが、結婚前の予習として、人生を切り開く材料として読んでもらえたらと思っています。