コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

西野亮廣のオンラインサロン会員になっても……「夢をかなえることは難しい」と思ってしまうワケ

2021/01/21 21:00
仁科友里(ライター)
「Salon.jp」公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「彼らにどんなメリットを提供できるのか?」西野亮廣
「西野亮廣ブログ」(1月20日)

 キングコング・西野亮廣が原作・脚本・製作総指揮を務める映画『えんとつ町のプペル』が観客動員数100万人を突破したそうだ。コロナ禍のご時世にこの数字は驚嘆すべきものだが、同作については、こんな出来事があったことをご存じだろうか。

 西野のオンラインサロン会員の20代前半男性・A氏が『えんとつ町のプペル』の台本&前売りチケットを仕入れ、販売できる権利を80セット、23万6,000円で購入した。仕入れ値よりも価格を上げて販売し、お小遣いを稼ぐつもりだったようだが、うまくいかず。結局、自分で80回映画を見ることにしたそうだ。

 この顛末をつづった「note」の記事がSNSでバズり、それに伴い「西野のやっていることは、マルチ商法などの犯罪行為ではないのか?」という意見を見かけるようになった。しかし、記事を見る限り、西野やその周辺が「買え」と圧力をかけている様子はないし、マルチ商法のキモは「新規会員を獲得すること」だから、それには当たらないと個人的には思う。当のA氏はチケットを買った理由を「挑戦している自分でありたかった」「オフ会で輝いている人の土俵に立ちたかった」とつづっているから、まぁ、若気の至りというやつだろう。

 ちょっと高めの授業料を払ったと思えばいいが、A氏がまた自分から厄介ごとに首をつっこんでいく気がしてならないのは、私だけだろうか。

 A氏の危なっかしい点は「やりたいことがなさそうなのに、目立ちたい」こと。どんな分野でもいいが、「やりたいこと」が決まっていれば、それを磨く手段が自ずと見えてくる。しかしA氏は、おそらくビジネスでの成功を夢見て、さまざまなプロジェクトに参加できる西野のオンラインサロン会員になったのだろうが、具体的に「やりたいこと」がないようにしか見えず、だから努力のしようもなく、結果も出ない。そのため、オフ会で輝けなくて落ち込み、だからこそ、無謀な挑戦をしてしまうのだと思う。

 断っておくが、私はA氏にダメ出しをしたいわけではない。A氏をはじめ、大多数の人は「やりたいことがないという幸せ」について、無自覚すぎるのではないかと感じるのだ。

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