韓流に負けた蜷川実花『Followers』、『今際の国のアリス』の可能性ーーNetflix国内ドラマの課題とは?
では他ジャンルならどうか? 『呪怨:呪いの家』は、ホラー映画『呪怨』の前日譚を、三宅唱監督がドラマ化したものだ。80年代末から90年代にかけて起こった猟奇殺人の背後に、ある家で起こった惨劇があるのではないか? という描き方は、海外ドラマ『ウォッチメン』(HBO)にも通じるアプローチで、ホラー映画を歴史的な事件とつなげるというアプローチ自体は悪くなかった。
しかし、残虐な描写がひたすら連鎖するという展開は単調で、良くも悪くも「投げっぱなし」の終わり方なので、散りばめられた伏線が回収されるミステリー的な面白さを期待していると、肩透かしを食らう。昨年に作られた園子温監督の単発ドラマ『愛なき森で叫べ』と同じく、エロ・グロ・ナンセンスの見世物小屋でしかない。
『Followers』も『呪怨:呪いの家』も、昨年話題になったアダルトビデオ業界の黎明期を描いた『全裸監督』のヒットを受けて作られていることは間違いないだろう。
どの作品も80〜90年代に対するノスタルジーが強く感じられると同時に、過激な暴力やエロがウリとなっているが、即物的な刺激だけで終わっているというのが正直な印象だ。
『今際の国のアリス』に期待
『Followers』『呪怨:呪いの家』に比べると12月10日に配信された『今際の国のアリス』には可能性を感じる。
本作は、無人の街となった東京に閉じ込められた青年たちが謎の「げぇむ」に巻き込まれる物語。00年代に国内ではやったデス・ゲームもので、漫画やアニメでは手垢のついた題材だが、『GANTZ』や『キングダム』等のアクション大作映画を撮った佐藤信介が監督なだけに、東京を舞台にしたアクションドラマとしてクオリティの高い作品となっている。
実写ドラマでありながら国内ランキングの上位にも食い込んでおり、シーズン2の制作も決定した。この映像が作れるのなら、アニメの専売特許となっている『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』といったジャンプ漫画を、実写ドラマで見られるのではないかと期待してしまう。
すでにNetflixでは、90年代に大ヒットした「ジャンプ」のバトル漫画『幽☆遊☆白書』(冨樫義博)の実写ドラマ化が発表されている。制作は『今際の国のアリス』と同じROBOTであるため、クオリティは問題ないだろう。
今後、Netflixの国内ドラマに可能性があるとすれば、ジャンプ系バトル漫画の映像化かもしれない。
(成馬零一)