ドラマ評論家が選出「2021年ブレークしそうな若手俳優」ベスト3! 松下洸平、岡田建史ランクイン
――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2021年にブレークが期待される若手イケメン俳優を選出。名バイプレイヤーから大ブレーク間近の顔まで、3名が選ばれた。
1位 仲野太賀
仲野太賀は、13歳の頃から「太賀」という名前で芸能活動をしていた芸歴の長い俳優。ドラマ『愛という名のもとに』(フジテレビ系)でチョロ役を演じた中野英雄の息子としても知られている。
映画では、深田晃司監督の『淵に立つ』(2016)等の作品で高く評価され、テレビドラマでは宮藤官九郎脚本『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)で、ゆとり世代のモンスター社員・山岸を演じ、注目された。すでに名バイプレイヤーとしては盤石の地位を確立していたが、19年に「仲野太賀」に改名したことで、俳優として新たなステージに突入。20年には『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)でドラマ初主演を果たした。
本作は、芸人の南海キャンディーズ ・山里亮太がアイドルや女優をモデルに執筆した同名小説(東京ニュース通信社)の映像化。中条あやみ、芳根京子、森七菜といった若手女優が主演を務めたオムニバスドラマで、仲野は山里の“分身”として、毎話違う役で出演、芸達者ぶりを印象付けた。
同時期には、森七菜主演のドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)にも出演し、コンビニのスイーツづくりに燃える主人公を支える、スイーツ開発の相棒・新谷誠を好演。
物語は森演じるヒロインと中村倫也演じるクールな若社長のラブストーリーだったので、仲野が演じた男性は、恋の鞘当て役だったが、ヒロインを支える誠実なキャラクターが好評で、本作で恋愛モノもイケることが証明されたといえるだろう。
『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)以降、誠実で優しい男を演じることができる、一見、地味な俳優に人気が出る傾向はある。すでに演技力に定評があることを考えると次にブレークするのは、仲野太賀かもしれない。
2位 松下洸平
NHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『スカーレット』でヒロインの夫・八郎を演じたことで注目された松下洸平は、すでに20年に大ブレークを果たしたともいえるのだが、実は本当の意味で人気が爆発するのは、21年ではないかと思う。
松下は、歌手活動の傍ら、俳優として舞台を中心に活動。『スカーレット』に出演したことで一気に注目が集まり、久しぶりに朝ドラから生まれたシンデレラボーイとなった。『スカーレット』の後も、コロナ禍の緊急事態宣言中の日常を描いたリモートドラマ『ホーム・ノット・アローン』(NHK)で、在宅勤務中の女性と心を通わせる居酒屋の店長役を好演。ゲスト出演した『MIU404』(TBS系)では、殺人事件の容疑者となった、ある事情を抱える逃亡犯を演じ話題となった。
その後も『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)『東京タラレバ娘2020』(日本テレビ系)と立て続けにドラマ出演し、10月には『スカーレット』と同じ水橋文美江脚本の恋愛ドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)で、波瑠演じるヒロインの恋人・青林風一役に抜てきされた。
短期間でこれだけドラマ出演が増えたのは、松下の佇まいが多くの視聴者に求められているからだろう。松下は、真面目で優しいが、どこか頼りなくて情けない青年を演じることが多い。こういった男性は、一昔前なら「退屈でつまらない男」と一笑に付されたのかもしれないが、イケメン俳優が氾濫するテレビドラマの世界では、逆にレアで、この「普通っぽさ」を備えたカッコいい男性俳優が常に求められている。
松下はその難しい条件を奇跡的にクリアしている俳優で、ドラマの作り手が一番求めている俳優である。21年は、松下を主演にしたドラマが作られるに違いない。