カルチャー
北芝健氏インタビュー【前編】

元公安が語る、刑事ドラマのウラ側! 『絶対零度』の井沢範人に警察関係者がびっくりしたワケ

2020/12/05 16:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

――確かに公安関係のエピソードや公安出身のキャラクターが出てくる刑事ドラマが増えてきましたね。

北芝 『絶対零度』シリーズ(フジテレビ系、10→20年)のシーズン3と4『~未然犯罪潜入捜査~』(18、20年)の主人公・井沢範人(沢村一樹)は、特殊な案件を取り扱う元公安エリートの刑事。彼のセリフに「元公安ですから」というものがあったのですが、見ていた警察関係者がびっくりしていました。

――どうして驚くのでしょうか?

北芝
 公安が出ていること自体にびっくりしたんです。というのも、ある種、刑事ドラマで公安は“タブーな存在”だったんですよ。例えば以前であれば、刑事が事件の捜査をしていく中、壁にぶつかり、問題を掘り下げていくと、公安の担当する事件にぶち当たって手を引く……という作品が多かった。現実でも、一般の刑事が事件を捜査する中、公安部外事課の担当するテロや国際スパイの事件と関連していることがわかり、それ以上、手が出せなくなるということは、今の時代でもあることなんです。

 ところがドラマでは、興味本位でやすやすとその垣根を越えて、公安出身の刑事に「元公安ですから」なんてセリフまでしゃべらせる。警察関係者は、刑事ドラマに幅の広がりを感じ、「そんな時代が来たのか」と驚いたわけです。このように、昭和時代の“とにかく走る”“銃をぶっ放す”など、ある意味“捜査マシーン”のようなキャラが登場するドラマより、舞台設定にリアリティがあったり、特色があるドラマが、世間に求められる時代になったんだなと思いましたね。

北芝健(きたしば・けん)
早稲田大学卒業後、商社に勤務するも一念発起して警視庁入庁し、交番勤務の後、私服刑事となる。一方で鑑識技能検定にもパスし、警視庁の語学課程で優等賞をもらい、公安警察に転属したが、巡査部長昇任試験を拒否し、巡査のまま退職。ロス市警の捜査に協力したことから、アジア特別捜査隊と懇意になり、犯罪捜査をネイティブの英語で伝える語学力を身につける。現在は現場捜査の経験を生かし、複数の学校の講師として犯罪学を教える。プロファイリングの第一人者としてテレビのコメンテーターなどで活躍。『警視庁 強行犯捜査官』(さくら舎)、『迷宮探訪 時効なき未解決事件のプロファイリング』(双葉社)など著書多数。

(後編につづく)

最終更新:2020/12/05 16:00
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