カルチャー
北芝健氏インタビュー【前編】
元公安が語る、刑事ドラマのウラ側! 『絶対零度』の井沢範人に警察関係者がびっくりしたワケ
2020/12/05 16:00
――確かに見ないですね。どうして当時は、そんなあり得ないシーンがあったんでしょうか?
北芝 東映ヤクザ映画が全盛だった頃の演出の名残なんですね。刑事がヤクザの顔をライトで照らすというシーンがあったり、ヤクザがそのライトをひったくって殴ったりとか、東映ヤクザ映画時代の遺物なんですよ。
アメリカのドラマ現場では、例えばロサンゼルスで制作しているとLAPD(ロサンゼルス市警)が全面監修するなど、リアリティ志向の演出を徹底しているんです。ですから、ドラマを見るだけでアメリカの犯罪捜査事情がわかる。ところが日本では、そもそもプロが考証・指導で現場に参加することが珍しかったんです。
むしろ芸能プロダクションの背後にいるヤクザが、自分が捕まった時の話を基に、「ああだ、こうだ」とアドバイスしている。ある現場で、プロダクションが用意したヤクザの考証・指導と、我々警察OBの考証・指導が鉢合わせしたことがあった。さすがにその時はヤクザが黙って後ろで見てましたよ(笑)。
――まぁ、捕まえる本職に聞けないなら、捕まる本職に聞こうと思うのは理解できないこともないですが(笑)。
北芝 コンプライアンス的にヤクザが現場に入れなくなり、警察OBたちのプロの目線による考証・指導が入るようになった結果、昨今、刑事ドラマのクオリティは高くなっていきました。2012年と13年に放送された泉ピン子さん主演の『落としの鬼 刑事 澤千夏』(テレビ東京系・BSジャパン)シリーズは私がかなり細かく監修して、リアルな刑事ドラマになりましたね。
あと最近の刑事ドラマの特徴としては、「花形部署」といわれる捜査一課ではなく、別の部署が主役となることが増えた。その部署はずばり、公安です。