芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー
『ザ・ノンフィクション』臓器を提供する、しない? 死生観に結びつく臓器移植の現状「私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~ 後編
2020/11/24 19:29
病気を抱えると、闘病そのものの肉体的ダメージはもちろんだが、それに伴い家族、雇用先との関係が悪化することもあり、そうした精神的なダメージも深刻だ。
心臓移植は、日本では5年以上「待機」の状態が続くそうで、本人、家族、関係者の闘病も長期戦になる。支える側も、1週間で回復する見込みがあるなら優しくできるだろうが、それが年単位になれば、なかなかうまくいかない日だってあるはずだ。番組の前後編を見ても、平澤と平澤の元雇用先、平澤の妻・友子と義両親、容子と夫の関係が悪化していく様子が見えた。平澤、友子、容子それぞれが、相手から言われた言葉についてこぼしていた。
病気そのもの以外の、こういった二の矢が刺さってしまうのが、難病のつらさだと思う。その言葉だけを取り出してみると、確かに心無い一言に聞こえる。ただそれは、すでに関係がギクシャクとしている中での一言だ。相手にも言い分はあるだろう。こう冷静に思えるのも、他人だからであり、もし私が言われた側なら、確実に根に持ち、文句を言いまくるとは思う。
関係がギクシャクしたら、すでにときは遅いのであり、その前に事態を収められたらベストなのだが、病めるときにそれを求めるのも難しい。一方で、容子も平澤も患者会など、「同じ病を持つ人同士で気兼ねなく思いを話せる場」に積極的に参加しているのは、日々をよりよく生きていく知恵だと感じた。似た境遇でないと分かち合えないことがあるだろう。
関連記事
『ザ・ノンフィクション』人の死を待つ移植待機患者の葛藤「私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~ 前編」
『ザ・ノンフィクション』元日本ボクシング連盟終身会長・山根明の今「たたかれても たたかれても… ~山根明と妻のその後~」
『ザ・ノンフィクション』覚醒剤で服役12回、結婚4回の男の実像とは「母の涙と罪と罰 2020 後編 ~元ヤクザと66歳の元受刑者~」
『ザ・ノンフィクション』再犯率8割、50代以上の覚醒剤依存者の現実「母の涙と罪と罰 2020 前編 ~元ヤクザ マナブとタカシの5年~
『ザ・ノンフィクション』「うちらに死ねって言うの?」ショーパブキャストの啖呵「禍の中でこの街は ~新宿二丁目 コンチママの苦悩~」