【エミー賞ドラマ7作品:あらすじ紹介】『ユーフォリア』絶賛の嵐、『ウォッチメン』11部門制覇、『シッツクリーク』ほか
セレブな富豪として何不自由なくリッチな暮らしを送っていたローズ家。一家の主人ジョニーはレンタルビデオの帝王として財を成したのだが、ビジネス・マネジャーにだまされ、財産を失うところから物語はスタートする。
豪邸もろとも没収されたジョニーだが、1991年に「息子へのバースデー・ジョーク」として購入したカナダの寂れた田舎町シッツ・クリークだけは没収免除された。ジョニーは、昼メロドラマの女優として活躍していた妻のモイラ、わがままに育てられてきた自分勝手な長男デヴィッドと長女アレクサの家族と一緒に、何もないシッツ・クリークにあるボロボロのモーテルに移住。プライバシーもない悲惨な貧困の中、新生活を始める。
製作総指揮/脚本を務めデイヴィッド役も演じたダニエル・レヴィは、「カーダシアン家はお金がなくてもカーダシアン家であり続けるのだろうか」というアイデアのもと、この番組の制作を思いついた。ジョニーを演じるユージン・レヴィは実の父親で、姉のサラ・レヴィも重要な役どころで出演している。
モイラ役のキャサリン・オハラは『ホーム・アローン』の母親役でも有名だが、本作で演じた「田舎町で落ちぶれても、ウィッグをつけ豪華な服装で着飾る」マダムは当たり役となった。彼女の衣装を毎週楽しみにしていたファンも多く、“ニュー・ゲイアイコン”として絶大なる支持を得るようになった。
同作はLGBTQ+から高い支持を得ているが、それはパンセクシュアル(セクシャリティ関係なく恋愛する全性愛者)という設定の長男デヴィッドの役が、とても自然に描かれているから。LGBTQ+のキャラクターが登場するドラマやコメディの多くが、“問題提起”するようなストーリーの中、『シッツ・クリーク』では、パンセクシュアルの思考や行動、恋愛が「普通の日常」としてサラリと描かれている。セクシュアリティを押し付けないストーリーであるため、同性愛者らに嫌悪感を感じる人も楽しめ、かつ「こういう人たちもいるんだ」と思えるようにさせたと評価されているのである。
どのキャラクターも個性的だが、性格はとても良い。そんな彼らが“何もない田舎町”で成長していくという「愛あふれるハートウォーミング」なストーリーは、シンプルだが楽しく、世界中から愛されるように。友達のような感覚を抱きながら視聴できるという点も、孤独になりやすい現代においてヒットする大きな要素となったのだろう。
2015年1月からカナダのPop TVで放送され、社会現象を巻き起こした同作は今年、シーズン6で、ファンの誰もが望んでいたものを超えるハッピーなエンディングによって幕を閉じた。
史上初となる、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(ユージン・レヴィ)、主演女優賞(キャサリン・オハラ)、助演男優賞(ダニエル・レヴィ)、助演女優賞(アニー・マーフィー)の主要部門を全制覇するという快挙となった本作は、キャスティング賞と衣装賞を含む9部門を受賞。
日本ではNetflixで配信されている。
『ウォッチメン』【リミテッドシリーズ/テレビムービー部門】リミテッドシリーズ作品賞、主演女優賞ほか
強制的な世界平和が作られたというDCコミックの後の世界を描いた同作は、「実在した歴史の裏にはスーパーヒーローの関与があった」という架空の世界を描いたもの。自警団として大活躍していた覆面スーパーヒーローたちはその活動を禁じられ、ほとんどは引退、または政府のもとで働いている。
物語は、1921年にオクラホマ州で実際に起きた、白人暴徒による黒人住民の虐殺事件「タルサ大虐殺」のシーンから始まっており、これがドラマの重要な出来事となっている。ドラマはタルサが舞台で、タルサ大虐殺の犠牲者や遺族への賠償金支払い制度に反発した白人至上主義者と、正義を守るスーパーヒーローたちや、「家族を殺されないように」黄色いマスクで顔を隠した警察官たちの戦いを描くというストーリー展開になっている。
米HBOで昨年10月から放送開始された『ウォッチメン』は、今回のエミー賞で、作品賞、主演女優賞(レジーナ・キング)、助演男優賞(ヤーヤ・アブドゥル)、ファンタジー/SFコスチューム賞、撮影賞、キャスティング賞、脚本賞、シングルカメラ編集賞、作曲賞、音響賞、サウンド編集賞を獲得。最多となる11部門を制覇した。
日本では、スターチャンネルとAmazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX」で視聴できる。