万引きGメンがつい反応する「エコバッグの持ち方がおかしな人」……デカいバッグで高級品を盗みまくる、居酒屋店主の呆れた手口
「あれ、店長さん。どうしたんですか?」
話を聞けば、ホリケンさんは反対口にある居酒屋のオーナーで、いままでに何度か飲みに行かれたことがあるとのこと。店長の知り合いだったことに驚きつつ、現在の否認状況を説明すると、この人はそんな人じゃないよと、逆に私を疑うような目を向けられました。
バッグの中に隠したものを任意で出してもらい、店長に精算履歴を確認していただくも、同一商品群の履歴は当然のことながら見当たりません。言い逃れのできない状況に追い込まれ、呆然と空を見つめたままでいるホリケンさんに、そっと声をかけます。
「知らない仲じゃないんだし、これ以上の迷惑はかけないほうがいいかと思いますよ」
「……ごめんなさい、申し訳ございません! お支払いしますので、許してください!」
明らかに困惑する店長を尻目に、バッグの中にあるモノを全て出すよう促すと、近隣店舗の商品と思しき食品も大量に出てきました。うなぎや和牛肉、活鮑など、どれもが高級品で、店の営業に使うための食材であることに違いはなさそうです。この店の被害は、6,000円ほどですが、近隣店舗の被害は優に1万円を超える様相で、ホリケンさんの状況によっては、逮捕もあり得る状況と言えるでしょう。
「こんなにたくさん、どうしちゃったんですか?」
「言い訳になっちゃうんですけど、コロナでお客さんが全然来なくなっちゃって、店がヤバイんです」
「それは、わかるけどさ。こんなデカいバッグを持ってきているのに、なに一つ買っていないのはショックだなあ。警察、呼びますね」
詳しい話を聞けば、ホリケンさんは48歳。3万円ほど所持していますが、すぐに電気代を支払わないと、店の電気を今日にも止められてしまうそうで、このお金は使えなかったのだと話しています。通報を受けて間もなく駆け付けた警察官たちも、ブツ(被害品のこと)の多さに驚かれていました。
「Tさん(もう一件の被害店舗)は、買い取りでいいって。こちらは、どうされます?」
「同じような経験がある人ですか?」
「これだけのことやっているから、とても初めてじゃないだろうけど、捕まったことはないみたい」
目立つ前科前歴もなく、店長の顔見知りだったこともあって、商品の買い取りと今後の出入禁止を条件に、被害申告はされませんでした。深々と頭を下げて、警察官に囲まれながら事務所をあとにするホリケンさんの背中を見送りながら、呆れ顔の店長が呟きます。
「もしかしたら、ウチで盗まれたモノに金を出して、飲み食いしていたのかもしれないなあ」
盗まれた活鮑が、パックの中で弱々しく蠢いている姿は、しばらく忘れられそうにありません。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)