ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』言動の全てが“演技”がかった男「東京でビッグになりたい ~所持金10万円の上京ホームレス~」

2020/09/15 16:34
石徹白未亜(ライター)

周囲から見れば不自然なのだが、本人にはそれが自然

 しかし、私自身が、そうした台詞めいた、演技がかったことを言う人間だとして強く言いたいのは、本人にしてみたら、これが一番自然であり、素であり、楽であり、快適なのだ。逆に、いわゆる一般的な「自然体」こそが「不自然」で一番難しかったりする。

 こういうタイプは、「自然体」に生きることはおそらくできないし、そうしようとすると、おそらく生きる気力も同時に失っていく。なので、この性質を生かす方向に自分を置いていくのがいいのだろうと思う。

 とはいえ、ケイタのアポなし社長訪問など、浮足立ったことを選び地道さを避けるところや、金を稼いで何がしたいのかというところがすっぽり抜けているのはどうかと思う。FXは資金投入の仕方によっては資金がゼロになるどころか、パチンコで抱えた300万とは桁が違う借金を抱える可能性だってある。投資の世界で生き残る人は手堅い。派手な行動を好むケイタが、手堅く地道な投資ができるのか心配だ。

 だが、東京に進出したり、父親が薦めた「堅い会社に勤める」のではない生き方を模索するケイタの選択自体は、自然体で生きられない自分のことをわかっている良い選択だと思う。己の気質とうまく付き合い、使いこなしていってほしい。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「コロナと中華街 ~私はこの街で生きていく~」。日本で最も早く新型コロナに翻弄された町・横浜中華街。「日本から出ていけ」という心無い手紙も届く中、店を開け続けたある小さな中華料理店を見つめる。


石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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いとしろ堂

最終更新:2020/09/15 16:34
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