コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験の初テストで「偏差値27」の衝撃! 塾では最後尾……「息子は優秀だと思っていた」母の焦燥

2020/09/13 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

  大手企業に勤める総合職の裕子さん(仮名)も、一人息子である弦君(仮名)の“ファースト偏差値”に驚いた一人だ。

 夫婦ともに地方出身者で、大学までオール公立で過ごしてきたという裕子さんいわく、「中学受験の“ち”の字もない地域で育った者」にとっては、先輩社員が口にする「中学受験」は、他人事であったそうだ。しかし、弦君が小学校に上がる頃から、だんだんと感化されるようになり「弦も中学受験をしたほうがいいのかな?」と思うようになったという。
 
 裕子さんは受験当時を振り返りながら自嘲気味に、こう話してくれた。

「自慢に聞こえるかもしれないんですが、受験塾に入れるまで、弦のことは『優秀な子』だと思い込んでいました。小学校のテストでは常に満点かそれに近い点数しか取ってきたことがないので、当然、受験塾に入ったら、最上位クラスは間違いないと思っていたのです……」

 ところが、ふたを開けてみたら、偏差値27、最後尾クラス。裕子さんは、「真面目に『72』」のプリントミスではないか?」と思ったという。

「まず、偏差値に20台があるのか!? ってことに衝撃を受けました。私自身は『いつも偏差値は60台くらいだった』という記憶があるので、そもそも母集団が違うという発想にはならなかったです」

 これは、小学校のテストで出題される問題と、実際の中学入試問題の難易度が桁外れに違うということを如実に示す出来事。小学校で優秀なら、受験塾でも優秀ということにはならないのだ。

「『弦が優秀ではない!』と知り、正直、慌てました。親のミスと言われれば、それまでですが、小学校の成績なんかまったく当てにならないってことが、よくわかったんです」

 勉強熱心な性格である裕子さんは、それから塾のテキストを自らひも解いて、弦君に解るように丁寧に解説をしていったという。

「受験はテクニックということもあるので、問題に慣れるにしたがって、弦の偏差値は面白いように伸びました。偏差値50までは順調でしたね。ところが、55の壁が超えられない。主人も、頭では母集団の違いなども理解しているんですが、どうしても偏差値50=平均という意識が抜けなくて、『金かけてまで、平均の学校に行くことはない! 上位校に行けないなら、やめてしまえ!』って怒っていましたよ……」

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