ネット通販「抗体検査キット」を医師がジャッジ! 「新型コロナ感染初期にも対応」怪しい謳い文句の真偽は?
では、問題の「抗体検査」に関してだが、抗体は感染してから時間がたたなければ出現しないものと報道などで伝えられている一方、現在複数の「抗体検査キット」の販売サイトに「感染初期にも対応可能」と明記されている点を、近藤氏はどう捉えているのだろうか。
「抗体には、IgM抗体とIgG抗体の2種類があります。IgG抗体は、確かに感染して1〜2週間程度たってから出てくるものなのですが、一方でIgM抗体は、比較的、感染初期に出てくるもの。なので、『感染初期にも対応』というのは、IgM抗体のことを指しているわけです。IgM抗体とIgG抗体がごっちゃになっていると、確かに『抗体検査で初期の感染はわからない』と思うのではないでしょうか」
現在通販サイトで売られているキットは、IgM抗体とIgG抗体を同時にチェックするものが一般的で、キットによって異なるものの、感染から3〜5日程度でIgM抗体を判定できるケースもあると近藤氏は言う。
「IgM抗体ができる前に抗体検査をしても意味はありません。抗体検査では陰性だったものの、PCR検査では陽性が出たというケースもありますが、それは感染して1〜2日のごく初期だったから、もしくはその抗体検査自体の精度が低かったからと考えられますね」
そうなると、感染初期における「抗体検査」自体に有用性があるのか、という疑問も生じてくる。厚生労働省は、「現在、日本国内で医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)上の体外診断用医薬品として承認を得た抗体検査はありません」との見解を示しているが……。
「感染リスクを下げるため、特に多くの人が一斉に検査を行う場合、精度自体はPCR検査や抗原検査に劣るものの、費用や利便性の面から考えると『抗体検査しかできない』という現実があるんです。PCR検査と抗原検査は、医療機関でしか受けられませんし、しかも自由診療なので、特にPCR検査は4〜5万円と高額ですから」
新宿シアターモリエールで起こったクラスターも、「舞台関係者全員を病院まで連れていって、4〜5万円するPCR検査を受けさせることができただろうかと考えると、難しいと思います。まずは抗体検査で比較的初期の感染の可能性を調べるというのは、100点の結果は得られないものの、少しでもリスクを下げるという面では、有用性があるのではないでしょうか」。