万引きGメンを追尾する「変な男」の正体! スーパー側が「冗談じゃないよ!」と激怒した珍事件の真相
こんにちは、保安員の澄江です。
つい先日、都内の繁華街に位置する大型スーパーマーケットで勤務をしていると、他者からの強い視線を感じました。捕捉された経験を持つ万引き常習者などは、実行前に我々の存在を確認することがあるので、私たちは見られることにも敏感なのです。自分の感覚を信じて周囲を確認すると、どことなくN国党党首の立花孝志さんに似ている40歳前後と思しき体格のいい男性が、チラチラと私のことを気にしています。この上ない早足で移動してみても、しっかりと私の後についてきました。年齢のことはさておき、私も女。見知らぬ大柄の男性に後をつけられて、怖くないわけありません。無用のトラブルを避けるべく、一旦身を隠すことに決めてトイレに向かうと、私の行き先を気にするように、入口の手前までついてこられました。
(変なヤツね! いったい何がしたいのよ?)
立花さんをやり過ごすために、トイレで時間を過ごしていると、お店から持たされている保安員専用のPHSが鳴りました。慌ててボタンを押して電話口に出てみれば、妙に慌てた様子のマネージャーさんが、この上ない早口でしゃべり始めます。
「いま、どこですか? 地下の食品売場に、なんか変な男がいるので、大至急見てほしいんですけど」
「ちょうど地下におります。どんな男ですか?」
「40歳くらいの、大柄な男です。お客さんを見て回っているので、痴漢とかスリかもしれません」
(あの男だ……)
マネージャーとの通話を終えて売場内を探索すると、立花さんはすぐに見つかりました。自分の存在を認知されながらも、相手に気付かれぬよう注視しなければならない状況の緊張感は、計り知れるものではありません。職業柄、正体がバレてしまっては仕事にならず、「何を見ているんだ」と絡まれることもあるので、細心の注意が必要なのです。努めて慎重に追尾すれば、商品には目もくれず、店内を見回したり、お客さんの後をつけている様子が見て取れました。どう見ても買い物に来たようには見えず、その目的が気になります。
(いったい、何をしに来たのかしら?)
立花さんの目的を探りながら追尾していると、複数の和牛肉パックを抱えた中年女性が、私の前を通り過ぎました。普段の習性から、ついつい足を止めて動向を見守れば、不思議なことに立花さんも同じように足を止めて、まさに保安員といった体で商品棚のエンド(商品棚の端のこと)から中年女性を注視しています。まもなく、和牛肉パックをバッグに隠した中年女性は、続けて手にしたホタテのパックも同様に隠して、そのまま店の外に出ていきました。声をかけるべく後を追うと、中年女性と私の間に、立花さんが割り込んできます。