コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験に2年間で400万円投入、マンションも手放して……「受験産業に踊らされた」母が今思うこと

2020/08/22 19:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 その塾は、成績順に5クラス編成になっており、芳樹君は一番下のクラスでの受講となったそうだ。

「芳樹は負けず嫌いな面があるんですが、とにかく仲間のいる上から2番目のクラスに行きたいってことで、かなり頑張っていたんです。でも、そもそも基礎がなかったもので、これをどうにかしないといけない! って塾に相談することにしました」

 すると教室長から、学生が講師を務める系列の個別塾を勧められ、塾のない日はそこで勉強をすることになったという。

「全ての曜日に塾が入るようになってしまったのですが、芳樹の成績は思うようには上がりませんでした。先生に相談すると『高学年になると、みんなが一斉にギアを上げますから、普通に勉強しているだけでは、成績はなかなか上がらない』って言われてしまい、親子で余計に焦っていました」

 多香子さんは個別塾の教師が学生だからいけないのではないかと考え、芳樹君が6年生になると、プロ家庭教師にみてもらうようにしたという。

「もう、あの頃の私は、お金の計算ができなくなってしまい、結局、中学受験対策の2年間だけで、塾と家庭教師に400万円近く費やしました……。芳樹はもともと、地頭がいいほうではないって気が付いていながら、それをどうしても認めたくなくて。『こんなにお金をかけたんだから、それなりの学校に行ってもらわなければ!』って思っていましたね」

 多香子さんは、自分のパート代を芳樹君の塾代にあてていたそうだが、それでは足りずに、貯金に手をつけるようになっていったという。

「マンションの頭金を払ったせいで、貯金もあまりなかったんですが、それでも『教育費のためだから!』って言い訳をして、出していましたね。今、思えば、完全に受験産業に踊らされていたような気がします」

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