日テレ『バンキシャ!』で現地取材に「お触れ」が……コロナ禍で取材ができない報道現場のジレンマ
7月に入り、都内を中心に再び感染が拡大する中で、筆者も仕事を依頼されている出版社から、取材に出かけるのをストップされるケースが多い。とりわけ「今はやめて」と止められるのが地方取材である。
今月16日、熊本県などを襲った九州豪雨を取材するために、神奈川県から現地を訪れた時事通信社のカメラマンが、新型コロナウイルスに感染していたことが報道された。地方では、感染者数が増加している東京からの来訪者には厳しい目が向けられる。時事通信の例に限らず、感染者がテレビ、新聞、出版社などマスコミ関係者であれば、社名も一緒に報じられてしまう可能性が高く、万が一、職場でクラスターが発生してしまった場合は、業務が完全にストップするだけでなく、世間からは大きな批判を浴びることになるだろう。編集者も、そこまでリスクを背負うことはできないというわけである。
筆者としても、コロナの感染対策がテーマでもない限り、地方の取材は避けざるを得ない状況だ。どんな取材でも、現地で事前に連絡した人物にだけ、数時間話を聞いて終了……なんてことはまずない。滞在中に街ですれ違った人や、飲み屋で出会った人に話を聞いたりして、現地取材を行っていく、そういうものだ。
しかし、地方のコロナ感染者の状況を見ると、そのほとんどは「東京に出かけて」「東京から来た人が」という事例である。そんな状況で「東京から来ました」と取材に出かければ、白い目で見られることは明らかだろう。
先日、現地訪問を先送りしている仕事の担当者と話していたら、こんなことを言われた。
「どうしても、今取材に来ないと締め切りに間に合わないということなら止めませんが……いつものような対面取材はやめて、風景とか雰囲気を見るだけにしてくださいよ……」
そう言いながら、「……なんて、無理ですよね?」という顔で筆者を見るのだった。
筆者は、5月の緊急事態制限解除後に岡山県を取材で訪れているが、その時思ったのは、地方では想像以上に“よそ者”が目立つということ。岡山市は人口70万人の都市で観光客も多いが、少し田舎に行くと、部外者は圧倒的に目立つ。とても「東京から取材で来ました」とは言えない状況だった(筆者は岡山出身のため、ずっと地元民のふりをしていた)。
誰もがウイルスに感染する可能性を持つ中、特に地方取材は困難となっていると感じる昨今、取材陣は頭を悩ませている。