Go To トラベル開始、大都市からの旅行者の本音――「東京はコロナから逃げられない牢獄」「感染の危険感じない」
迷走状態のまま、4連休とともにスタートした「Go To トラベルキャンペーン」。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により、大きな打撃を受けた国内の観光業や飲食業などの事業者支援を目的として政府が打ち出したこの施策は、4月に実施が決まり、8月上旬から開始が予定されていた。
その後、政府は7月23日からの4連休に合わせて開始日を7月22日に前倒しすると発表するも、東京を中心に再び感染者が増加していることから、飲食や旅行などの消費喚起を促すキャンペーンの実施に世間から反発の声が続出。これを受け、政府はキャンペーン開始直前の今月17日に、東京都内を発着する旅行や、都民の利用は対象外にし、これによって発生するキャンセル料金は補償しないと表明。しかし、今度は旅行業者から批判の声が相次いだため、政府は20日、キャンセル料金を補償することを決定した。
そうして22日にキャンペーンがスタート。新型コロナウイルス感染者数は連日過去最多を更新する中、全国の観光地では観光客の姿が見受けられるようになっているという。直前に制度が見直されたことで「見切り発車」といった批判も多いGo To トラベル事業だが、観光産業にとっては、まさに進むも地獄、戻るも地獄という状況。たとえ感染のリスクがあったとしても、「観光客には来てもらわないと困る」というのが実情であろう。
観光産業の現状は……奇妙な雰囲気が漂う京都の街
去る6月、筆者は観光客の失われた状況を取材しようと京都を訪れた。訪れるにあたってまず驚いたのは、ホテルの宿泊価格だ。筆者がいつも利用している四条烏丸のビジネスホテルは、ここ数年、価格が上昇する一方。狭い部屋でも平日で1泊1万円前後が当たり前になっていた。それが、コロナ禍によって価格は大幅に下落し、1泊3,000円程度に。ホテルの従業員も「今までで、最も安い価格です」と言うが、それでも、「客足が戻ってくる雰囲気はまったくない」という。
とにかく、京都の雰囲気は今まで感じたことがないほど奇妙なものだった。なにしろ、コロナ禍によって京都の街は、世界各国から観光客が訪れる古都から、地元民しかいない地方都市へと様変わりしていたのだ。河原町あたりの繁華街は、地元民でそこそこ賑わってはいるものの、観光客ゼロの光景は明らかに異様だった。
観光客向けのエリアに足を運べば、その落ち込みぶりは目の当たりにできた。昨年まで、アジアからの観光客で足の踏み場のなかった錦市場は、営業している店も少なく、あちこちに「長期休業」の貼り紙がある。人気アーケード街・新京極あたりでも、地元民向けの店はまだ賑わいがあるものの、土産物屋は閑古鳥が鳴いていた。
ほかにも様子を見ようと清水寺に足を運んだところ、さらに驚きの光景があった。これまで、何度も訪れている清水寺の参道。ここで商売をしていれば絶対に潰れることなどあるまいと思っていた商店が、ことごとくシャッターを下ろしているのだ。わずかに開けている店も、店員が虚空に向かって呼び込みをしていたり、「マスクあります」の貼り紙があったり……。もはや、Go To トラベルでもなんでも、とにかく人に来てもらわねばというのが本音だろう。