EXIT・兼近大樹、「甘え上手」という天性の才能――私が「吉本のマッチ」と呼びたいワケ
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「オレを可愛がらないのは、おかしいんですよ」EXIT・兼近大樹
『ダウンタウンDX』(日本テレビ系、7月16日)
「目上の人に失礼な真似をしてはならない」と教えられた人は多いだろう。会社員の場合、自分の査定をつける人の不興を買うような真似をしても、何のトクにもならないからだ。
しかし、芸能界の場合、「失礼な真似」をしたとしても、それを上回る「甘えの才能」に恵まれているのなら、それはプラスになるのではないだろうか。
例えば、マッチこと近藤真彦。彼が昭和の芸能界の至宝、美空ひばりさんに狼藉を働いたことがあることをご存じだろうか? マッチは『あさイチ』(NHK)でこんなエピソードを披露していたことがある。15歳のマッチは、NHKの『ばらえてぃテレビファソラシド』に出演していたが、音合わせの際も手を抜かず、本番さながらに歌うひばりさんに対し、「あのおばさん、歌うまいね」と周囲のスタッフに漏らした。単なる日常会話のつもりだったが、その場が静かだったために、マッチの発言はひばりさん本人に聞こえてしまったそうだ。マッチはその後、楽屋まで謝りに行くが、ひばりさんは「率直に15歳の少年が聞いてうまいと言ってくれたことがうれしかった」と語り、その後マッチを可愛がってくれるようになったという。
デビューしたばかりのアイドルにとって、芸能界を代表する大御所は、たとえ同じ番組に出演したとしても、おいそれと口を利ける存在ではないだろう。しかし、「失礼な真似」をして謝罪することで、距離はおのずと近くなる。許してもらえるかどうかは、大御所の判断にかかっているが、一般的に言うのなら、いいオトナが子ども相手をに真剣に罰すると「おとなげない」と言われるので、許すことが多い。
しかし、ひばりさんがマッチをただ許すだけではなく、可愛がってくれるようになったのはなぜか。2019年7月に所属事務所の社長(当時)であるジャニー喜多川氏が亡くなった時に、彼は「長男でいながら、何度も泣いちゃいました」というコメントを出していた。分別のある長男的存在であるマッチが、人目を気にせずに涙を流すことで、ジャニー氏への強い愛と別れのつらさを表現しているように私には感じられ、マッチって相当な「甘え上手」だと思った。マッチのように、謝罪する側が「甘える才能」に長けている場合、最初の悪印象を覆して「面白い子ね」と可愛がってもらえるのではないだろうか。