レジ袋有料化に「おかしいだろ」と激怒! クレーマーはその後「エコバッグ」を万引きして……!?
(あれ!? あのお爺さん、またきてる……)
それから2時間ほど経過したところで、正面口から堂々と入ってくる博士の姿を発見しました。舌の根も乾かぬうちの再来店に慄きつつ、その動向を見守れば、入口脇にあるエコバッグの特設売場に入っていきます。
(あきらめて、買うことにしたのかしら)
そんな思いで注視を続けていると、棚からカゴにはまるタイプのエコバッグを手にした博士は、レジに寄ることなく地下の食品売場に続く下りエスカレーターに乗り込みました。この店の精算方式は各階精算が基本で、ポスターの掲示や店内放送でも繰り返し案内されていますが、まったく気に留めていない感じです。エスカレーターを降りて、カート上にカゴを置いた博士は、慣れぬ手つきでカゴにエコバッグをはめると、何食わぬ顔で歩き始めました。そのまま追尾してみれば、まだ精算を済ませていないエコバッグの中に、遠慮なく商品を詰めていきます。
(最後にまとめて精算するつもりなのかしら?)
野菜、生鮮食品、菓子、惣菜、酒などの売場を巡り、多くの商品をエコバッグの中に入れた博士は、多少混雑するレジをすり抜けてサッカー台に直行しました。エコバッグの開口部を素早く紐で締めて、それを肩にかけると、いそいそと上りエスカレーターに乗り込んでいきます。するとまもなく、ジャージのポケットからライターを取り出した博士は、エコバッグに付いたままだった値札のループを焼き切って、手際よく除去してみせました。エスカレーター最上部に滞留する値札を拾い、博士が店の外に出たところで声をかけます。
「店内保安です。これ全部、お支払いいただかないと」
「ああ? あんた、なんだよ? ほっといてくれ」
「そういうわけにはいきませんよ」
「うるせえな、離せ!」
大声を上げて逃げようとする博士の右腕を、逃がさないよう左脇に挟んで揉み合っていると、差し込んだ左腕に汚い爪を立てられました。攻撃を避けるべく体を回転させた瞬間、不意を突かれたらしい博士が、仰向けに転倒してしまいます。これ幸いと、肩にかかったままのエコバッグを膝で押さえて地面に押し付けるようにした私は、博士の動きを封じながら携帯電話を取り出しました。
「この野郎、離せ。女だからって、容赦しねえぞ」
「いま警察呼びますから、ちょっと待ってくださいね」
「なんでだよ? いいから、早く離せ」
仰向けのまま掴みかかってくるので、通報することもできずに右往左往していると、誰かが通報したのか、班長が若い警察官と一緒に駆け付けてくれました。
「お騒がせしてすみません。この人、これ全部払っていないんです」
「ケガはしてない? あんたのことだから大丈夫だろうけど、盗んだのは間違いないね?」
「両方とも大丈夫です」
警察官の姿を見て、なにやら大声を出していた博士でしたが、身柄を若い警察官に預けられた途端に、おとなしくなりました。班長に現認状況を説明しながら総合事務所に向かい、店長さんを呼んで被害を特定します。