レジ袋有料化に「おかしいだろ」と激怒! クレーマーはその後「エコバッグ」を万引きして……!?
こんにちは、保安員の澄江です。
7月1日より、全国の商店においてレジ袋が有料化されました。その代用品として、さまざまなタイプのエコバッグも販売され、もはや手ぶらで買い物に来る人のほうが珍しくなってきているほどです。エコバッグを持参することで、魔が差す機会も増えてしまうのでしょう。最近は、商品をポケットに隠す人よりも、持ち込んだエコバッグに商品を隠す人が目立つようになりました。犯行に用いるバッグの大きさに比例してブツ量は増し、逮捕率も上昇します。捕まえてみれば、大量に盗む人ほど、なに一つ買っていない場合が多く、泥棒特有の厚かましさを痛感することも増えました。今回は、エコバッグを利用した悪質万引き犯について、お話ししたいと思います。
当日の現場は、東京の端っこにある私鉄駅前に位置する大型ショッピングセンターM。地下1階、地上5階の一棟ビルが丸ごと巡回対象となる大型店舗で、長年にわたって通い詰めているお店の一つです。そのため所轄警察署で勤務する方々にも顔見知りが多く、この店に入るときには駅前交番に顔を出して、挨拶をしてから現場に入ることにしています。この日は、何度も担当していただいている班長が交番の外に立っておられ、目が合うと同時に声をかけられました。往年の名優、下川辰平さんに似ている気さくな警察官で、とても親しみやすい雰囲気の持ち主です。
「えー!? 今日入っているの? 参ったなあ。何時まで?」
「12時から20時までです。そんなに嫌な顔しないでくださいよ」
「嫌ではないですよ。でも、16時前後の通報は、できるだけ避けてもらいたいねえ。今日は、孫の誕生日会があるもんでさ。ご協力、お願いしますよ」
恥ずかしげに笑いながら話す班長の姿は、孫にデレデレのおじいちゃんにしか見えません。冗談半分ではありますが、残り半分は本気のようで、孫との時間を邪魔されたくないという気持ちが伝わってくるような気がしました。
「あら、おめでとうございます。こんな仕事なので、お約束はできませんけど、なるべく気をつけますね」
「なんとかお願いしますよ。去年も、万引きで行けなかったからさ……」
「そうだったんですか。今年は、行けるといいですね」
「今日だけは、再会したくないですね。お気をつけて」
なんとなく申し訳ない気持ちで班長と別れて現場に入り、いつものように巡回を始めてまもなく、地下1階の食品売場にあるレジのほうから、大きな怒鳴り声が聞こえてきました。何事かと、気になって駆けつけると、仮面ライダーに出てくる死神博士に似た雰囲気を持つ白髪の老人が、レジ担当の女性店員さんを怒鳴りつけています。
「袋の金まで取るのか? そんなの、おかしいだろ!」
どうやらレジ袋が有料化(1枚あたり3~5円)されたことに納得がいかず、女性店員を恫喝しているようで、すぐにマネージャーも駆けつけてきました。保安の立場から遠巻きに見守っていると、マネージャーの説明にも納得できない様子の博士は、顎を上下に怒鳴り続けて2人を困惑させています。
「じゃあ、これ全部いらねえから、金返してくれ。二度と買いに来ねえからな」
袋の代金を、よほど払いたくないのでしょう。一度支払いを済ませた分の返金を受けた博士は、マネージャーを睨みつけながら捨て台詞を吐くと、肩で風を切るようにして外に出て行きました。客の立場を履き違えたクレーマーと呼ぶべき粗暴な振る舞いは、見ていて気持ちのいいものではありません。博士の背中を見送った後、お手洗いに立ち寄って、気持ちを切り替えて巡回を再開します。