『ザ・ノンフィクション』大家族モノと貧困のしんどさ「シングルマザーの大家族 ~パパが遺してくれたもの~」
日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月28日は「シングルマザーの大家族~パパが遺してくれたもの~」というテーマで放送された。
あらすじ
千葉で暮らす續(つづき)家は4男6女合わせて10人の子どものいる大家族。3年前の7月、ダンプ運転手で一家を支えていた父・浩一が、突然くも膜下出血で42歳の若さで亡くなり、母・夕美子は一人で子どもたちを育てていくことになった。しかし次男(23)は定職につかず、三女(17)は高校を中退し、引きこもりになってしまう。節約をしても食費だけで10万を超えてしまうため、卵1パックを買うのもためらう生活が続き、1月には電気代を支払えず電気を止められてしまう。
新型コロナによる休校も重なり、家庭内の雰囲気はすさんでいくか、散らかった家を長女夫婦の協力を得て片付けたところ、浩一が残した家族のビデオテープが見つかる。そこには家族全員の映像が残されていた。
「長女の夫」という役回り
今回見てまず思ったのが、「長女の夫」のちょっと類を見ないほどの人間力だ。長女一家は県営住宅で4人の子どもと暮らしているのだが、續家の電気が止まった際、1カ月近く自宅に續家全員を滞在させていた。夜、疲れて仕事から帰ってきたら、自宅に妻の家族が大勢いる、という光景を目の当たりにしても「いつ帰んの?」と軽い調子でコミュニケーションを取っていた。そこには「耐え忍ぶ」「作り笑顔で乗り切る」といった様子はない。
2020年4月、新型コロナで休校になったことで、荒れ果てた續家の掃除も率先して行い、そこにも「嫌々感」「無理してる感」はなかった。やんなっちゃうなあ、という感じはありつつも、うんざりしている様子がないのだ。こうした長女の夫の存在が、この大家族を和ませていたように見える。空気を穏やかで優しい方向に変えるムードメーカーだ。まだ若いのに、一体どんな半生を送ってきたのだろう。長女の人を見る眼力も確かだと思った。
大家族モノと貧国のしんどさ
『ザ・ノンフィクション』ではタレント・美奈子の大家族シリーズ「漂流家族」があり、ほかにも各局で大家族シリーズは放送されている。大家族モノはファンの多い「数字が獲れる」ジャンルなのだろう。しかし、私個人としては、大家族モノは見るのがとてもしんどいため、自ら見ることはない。
その理由は、大家族モノはほぼ貧困とセットだからだ。夕美子は卵パック一つ買うのもためらうときがあると話す。そして、そのしわ寄せは子どもに行く。高校受験を間近に控えた四女は、家の電気が止まったことで、長女夫妻の家で最後の追い込みをする。無事に合格するも、制服や教科書など、入学にかかるお金の計算を、夕美子は携帯の電卓を使って四女の前でやっていた。四女にしてみたら、お金の都合は自分ではどうしようもないことだ。
さらに、23歳の次男はニートだが、かつて働いていた頃に給料やボーナスを家族の生活費として多く取られてしまい、働く気力がなくなっていったと、切ない胸の内を明かしていた。最初からなりたくてニートになったわけではなく、気力を折られてそうなったのだ。番組の最後、次男は再就職し家に5万円入れていると話していたが、これ以上要求されたら家を出て行けばいいのに、と思わずにはいられない。