万引きGメン憤怒! タトゥー夫婦の共犯目撃も「おれは盗ってないから」……ふんぞり返る夫の秘密
2人を事務所に連れて行き、盗んだ商品をデスクに出させると、計5点、合計2,800円ほどの商品が出てきました。所持金は、2人合わせても1,000円足らずで、商品を買い取ることはできません、2人の身分確認を済ませて、店長さんを呼んで判断を仰ぐと、すぐに警察を呼ぶことになりました。その動きを察したらしい旦那が、私たちを言い含めるように、投げやりな口調で言います。
「女房のやったことは謝るけどさ、おれは盗ってないから。警察呼んでもいいけど、おれは関係ないからね」
「そうですか? 警察には、自分の目で見たことだけをお話ししますので、ご心配なく」
旦那に裏切られて、自分の行く末を案じているのか、いつのまにか号泣していた女が、両手で私の手を握り締めて言いました。
「前に捕まってから、本当に、ずっとやっていなかったんですけど、2人ともコロナで仕事がなくなっちゃって……」
コロナ禍における濃厚接触は避けたいところですが、ボロボロと涙を流す彼女を見れば、その手を振り払う気持ちにもなれません。宥めるように相槌を打ちながら話を聞いていると、2人共に派遣社員で、コロナの影響で仕事がなくなり、収入が途絶えてしまったことから、やむなく再犯に及んでしまったと話しています。
「給付金は出たけど、家賃と光熱費でなくなって……。こうするしかなかったんです」
確かに同情すべき話に聞こえますが、共犯行為はもちろん、私を探してから犯行に至った点は非常に悪質で、とても見過ごせるものではありません。なによりも、明らかな共犯関係にありながら、泣き咽ぶ奥さんを尻目に犯行を否認し、偉そうに腕を組んで貧乏ゆすりをしている旦那が許せない気持ちになりました。普段は温厚な店長さんも同様だったようで、今回は厳しくしてもらおうと、珍しいことに被害届を出すと話しています。
「旦那のほう、こないだ送ったばかりのヤツです。今日は、時間かかっても大丈夫ですか?」
まもなくして臨場した顔馴染みの警察官によると、この旦那は数週間前にも、別の店舗で万引きをして捕まっており、書類送検されたばかりとのこと。その背景を聞けば、全ての罪を妻になすりつけて無関係を装うのも理解でき、やむなく再犯に至ったという女の主張にも合点がいきます。結局は、夫婦共に逮捕されてしまいましたが、女の流した涙だけは本当だったような気がして、どこか救われた気持ちになりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)