ジャニーズの「性虐待」暴露、覚醒剤逮捕――人気グループ“再結成”めぐる「口止め交渉」の闇

2020/05/14 15:00
渡邊孝浩

 コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたジャニーズファンに向けて、いま改めて読み直したいジャニーズ暴露本をご紹介。知られざるジャニー喜多川氏、ジャニーズ事務所の歴史を紐解く。

■『ジャニー喜多川さんを知ってますか』江木俊夫・構成/小菅宏(KKベストセラーズ)

『ジャニー喜多川さんを知ってますか』(KKベストセラーズ)

 1冊目に取り上げるのは、1997年に元フォーリーブスの江木俊夫が上梓した『ジャニー喜多川さんを知ってますか』(KKベストセラーズ)。

 江木氏は、3歳のときから子役として映画を中心に芸能活動しており、66年には特撮ドラマ『マグマ大使』にマモル少年役で主演するなど、すでに人気者となっていた。67年4月に、北公次、おりも政夫とともにジャニーズ(初代)楽曲のバックダンサーグループに参加。同10月に青山孝が加入し、フォーリーブスとして本格始動。68年9月に『オリビアの調べ』でレコードデビューするや、トップアイドルとして時代を席巻。『NHK紅白歌合戦』にも7度の出場を果たした。

 しかし、次第に人気は低迷し、デビューから10年後、78年に解散。


 江木はジャニーズを退所し、その後は、タレント、俳優として活動を続け、80年代になると芸能プロダクションの経営や、CMや番組の企画制作も手がけるなど、業界で培った人脈、経験を生かし活躍していた――ように見えた。

暴露本の中では異色の「褒めちぎり」テイスト

「解散の翌年、メンバーの北公次が、覚醒剤取締法違反で逮捕されて以降、フォーリーブスの存在はまるで“なかったこと”のようになり、テレビをはじめとするメディアにその名前が登場する機会はほとんどなくなりました。その後、88年に北がジャニー喜多川氏に受けてきた“ホモセクハラ”、つまり性的虐待の数々を生々しく綴った、自身の半生記『光GENJIへ』(データハウス)を刊行したところ、ベストセラーに。再び脚光を浴びました」(芸能記者)

 この『光GENJIへ』の後にも、ジャニーズ事務所の第一号アイドルグループ「ジャニーズ」の中谷良が『ジャニーズの逆襲』(同、89年)で、やはりジャニー氏から受けた性的イタズラについて告白。また、豊川誕も『ひとりぼっちの旅立ち』(鹿砦社、97年)の中で同様の暴露を行い、67年の「ジャニーズ」の時代から問題になっていたジャニー氏の所属タレントへの性的虐待疑惑が、その刊行ごとに蒸し返されていた。

 そんな中で、突如、飛び出したのが江木『ジャニー喜多川さんを知ってますか』だった。

 この中で、江木は、いかにジャニー氏が素晴らしい人物であり、優れたプロデューサーであるかを、徹底して褒めちぎり、持ち上げまくったのだ。当然、セクハラ疑惑に関する記述などあるはずもなく、暴露本によってついたイメージの回復を狙って企画されたものであることは、間違いないだろう。


 目次の項目をいくつか紹介すると、

〈大事な息子さんを預かるというポリシー〉

〈度肝をぬく演出の根元にあるアメリカ的な発想〉

〈夢追い人・ジャニーさんの根底にある人間愛〉

〈あらゆる経験は、ジャニーさんのおかげである〉

 と、とにかく一冊を通して、ジャニー氏礼賛のオンパレードとなっていたのだ。

 だが、この本が話題になることはほとんどなく、ジャニーズ事務所のイメージは回復するどころか、その後、江木によって、さら悪化するのだ。

ザ・ベリー・ベスト・オブ・フォーリーブス