コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験に失敗、「絶対人に言えない学校」に入学――心が折れた優等生は「再生」できるのか

2020/03/28 19:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 それからというもの、未希さんは時々、クラスメイトと一緒に校長室を訪ねるようになったという。中3になったある日、校長室で友達が「最初は、私、この学校、すっごく嫌だったんです。だって、第1志望じゃないし。なんで私はこんな学校にいないといけないんだろうって……」と本音をぶちまけたことがあったそうだ。

「さすがに私は慌てて、友達を止めようとしました。だって、校長先生に直接そんなことを言うなんて、失礼すぎるっていうか……。でも、校長先生は、いつものようにニコニコしながら『うんうん、そうか、そうか』っておっしゃっていました」

 しかし、友達は「でも、今は未希や〇〇や〇〇って親友もできて、部活もすっごく楽しくて、校長室でお菓子も食べられるから(笑)! 私、本当にこの学校に入って良かった!」と続けたという。

「そしたら、校長先生が『お菓子! うん、大事だね(笑)』って大笑いしながら、『好きになってくれてありがとね。僕も君たちが大好きだよ』って言ってくれたんですよね……。私、その時、思ったんです。『私、この学校が好き!』って。ウチの先生たちって、成績で生徒を見ないし、いつも『君たちはそのままで価値がある』という態度で、私たちを認めてくれるんです」

 その時、校長先生は思い出したように「そう言えば、山田さんの登校時間が段々と遅くなって(笑)、僕は朝、密かにどっちが一番乗りかを競ってたんだけど!」と未希さんに尋ねたという。

 未希さんは笑顔で「もう、早く来る必要がないんです。もう『近所の人に制服姿を見られたくない』とは思いません。この制服、私の誇りなんで」と答えると、校長先生は、細い目を一層細くして「うんうん」と頷いていたという。

 実はこの校長率いるY学院は、子どもの「再生工場」の異名を持つ学校の一つである。

 さらに3年の月日が流れた。未希さんはこの学校に戻ってくることを誓い、この春から国立大学の教育学部に入学することが決定している。

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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湘南オバちゃんクラブ

最終更新:2020/03/28 19:00
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