ジャニーズ・ラウールとディオールコラボの意義――化粧品業界を席巻する「男性モデル」と、韓国コスメの広告事情
世界的なコスメのジェンダーレス化を受けて、韓国での男性イメージモデルの在り方も変わりつつある。1点目の変化は、広告でメイクをした姿を彼らが見せるようになったことだ。かつて、韓国で「イメージモデルの男性が使用している商品」として広告されるのは、スキンケアやパックなどの基礎化粧品、またBBクリーム、クッションファンデなどのベースメイクアイテムばかりだった。しかしここ1年ほどで、大小問わずどのブランドも男性モデルを積極的に起用するようになり、さらに彼らはアイシャドウやリップを施した姿で登場するようになっているのだ。
例えば19年にはコスメブランド「lilybyred」が夏限定ティントのイメージモデルに、アイドルグループGorden Childのチェ・ボミンを起用。広告写真のチェ・ボミンの唇には、実際にティントが施されている。また20年には、元X1のキム・ウソクが、韓国のプロ御用達ブランド「CLIO」の初男性モデルに就任(画像参照)。広告写真ではリップやアイシャドウを施し、公式動画では自らリップを引く姿を見せた。
2点目の変化は、起用される男性モデルの像が変わってきていること。前述したチェ・ボミン、キム・ウソクのように線が細く中性的な、いわゆる画一的な“美少年”風の美しさを持つ男性だけでなく、より一般的な男性像に近い男性モデルたちも起用されるようになったのだ。代表的な例が、18年にスタートしたコスメブランド「LAKA」だろう。韓国初のジェンダーニュートラルブランドを謳う「LAKA」は、当初からフルメイクを施した“普通の”または“男らしい”男性モデルを登場させた。
こうした背景下にあっても、日本では、18年にコスメブランド「M・A・C」と初タッグを組んだNissy(西島隆弘)などの例はあるものの、まだまだ男性タレントが化粧品のコマーシャルに起用されることはごくまれだ。そんな中で16歳の少年・ラウールが自らの唇にリップを引いてみせた姿は、エポックメイキングであるといえるだろう。