コラム
高橋ユキ【悪女の履歴書】

143カ所切り刻み、両手首切断――“お隣さん”に募ったオンナの恨み【練馬・隣家主婦メッタ切り殺害事件:前編】

2020/03/20 17:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

「第一報を受けた時は流しの犯行と思った。ところが現場を見て、これは女の恨みだ。すぐ解決すると感じました」

 こう語る捜査員の言葉通り、犯人はすぐに見つかった。明子さん宅の玄関には、女性ものの黒縁メガネと、赤い花柄の手提げ袋が落ちていた。「隣の青木さんと佐藤さんは仲が悪かった」という近所の聞き込みで、隣家に赴くと、玄関の敷石に血が点々と落ちている。玄関は閉まっていた。先ほど長女が助けを求め訪ねた両隣のうちの片方だった。

 横の戸を開け捜査員が中に入ると、掘りごたつの布団にくるまってテレビを見ている女性が目に入った。再放送の『寺内貫太郎一家』(TBS系)で、貫太郎が威勢良く家人をぶっ飛ばす様子が流れており、女性の傍らには、血に濡れた出刃包丁が転がっていた。呼びかけに渋々体を起こした女性に、捜査員は言った。

「いつもメガネをかけてるのに、どうした」

 サッと青ざめたこの女性こそ、つい先ほど隣家で明子さんをメッタ切りにして殺害した青木友子(仮名・当時47)だった。凶器として用いた刃渡り約20センチの出刃包丁は、のこぎりのように刃こぼれしていた。石神井署へ任意同行後、犯行を自供した友子は、その日のうちに逮捕された。そして取り調べで動機について問われ、こう言う。

「いつもわたしを小ばかにするような態度をとるので、ずっと恨んでいました。あの時は、自宅付近にいました。佐藤さんがパートから自転車で帰ってきて、私の目の前で『チリリン』とベルを鳴らして過ぎ去ったので、自転車に乗れないわたしをばかにするためにそうしたのだと思い、恨みが頂点に達してしまって……」

 そして、コタツの脇に放り投げられていた出刃包丁を、花柄の手提げバッグに入れて隣家に向かい、凶行に及んだのだった。

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