中学受験専門塾に「日に3回」通い、温かい弁当を届け続けた母――その息子が「高校進学」できなかったワケ
そんな3年間を過ごした真斗君は、無事S中学に進学した。初めの頃こそ、真斗君は張り切って学校生活に取り組んでいたのだが、徐々に補習に呼ばれるようになり、いわゆる「深海魚」という成績下位が定位置となってしまったという。
焦った朱美さんは真斗君に部活を辞めさせ、家庭教師を付けて、赤点回避に全力を尽くそうとした。しかし、成績はまったく上向く気配はなかったという。
そうこうしている内に、真斗君は中学3年生に進級したが、ある日、朱美さんは担任の先生から呼び出され、こう告げられた。
「このままの状態ですと、真斗君には併設高校への進学は認められないでしょう」
中高一貫校であっても、学力的に進学基準に満たないとみなされた場合は、高校へは上がれない。さらに朱美さんは、担任の先生からの次の言葉に、ショックを受けたそうだ。
「真斗君の場合、学力不足もありますが、それより何より『自発的に何かをやる』という意思に著しく欠けるということが問題です」
つまり真斗君は、全てのことにおいて「指示待ち」の受け身でいるというのだ。勉学も含め、自分でやらなくてはならないことに対してやる気を見せず、誰かが何かをしてくれるのが当然といった素振りでいるので、「友人関係にも心配な面がある」とのこと。
先生が「何をしたいのか?」と聞いても「わからない」と答えるため、「自由闊達、積極的な子を育てることに定評がある本校では、逆に伸びないのではないか?」などと言われたそうだ。
朱美さんはため息をつきながら、自身の行動を顧みた。
「宿泊学習の時に、真斗がメガネを忘れてしまったので、私が現地まで届けたことがあるんです。そう言えば、事前の保護者会で『お母さんたちは、お子さんに構わないであげてください』と言われていたんですが、メガネなしでは、いくらなんでも不自由だろうと思ってしまって……。私のこういうところが、真斗をダメにしてしまったんでしょうか……」