新型コロナの影響でテレビ業界に大打撃ーー「公開収録中止」「ドラマロケ地拒否」で現場も辟易
コンサートや舞台の中止・延期が相次ぎ、新型コロナウイルスの影響がエンタメに多大なる損害を与えてるいるが、テレビ業界も例外ではない。
3月8日に放送されたピン芸人の賞レース『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)では、大会史上初めて観覧客を入れない“無観客開催”を決行。新型コロナウイルスの感染拡大防止のための施策とはいえ、かつてない異様な雰囲気を感じ取った視聴者も多かったはずだ。優勝したマヂカルラブリー・野田クリスタルは、過去に出演していた『あらびき団』(TBS系)を挙げて「あれに比べれば全然マシ」と見事笑いをとっていたが、一方で、テレビの制作現場はまったく笑えない事態に陥っている。
「音楽番組やバラエティ番組で観覧客が入れられないのはもちろん、ドラマの撮影にも影響が出ています。いまもっとも悩ましいのは、ロケ予定だった場所に断られることですね。どれだけ小規模にしても20〜30人のスタッフが現場に入るので、飲食店や娯楽施設では感染リスクを恐れて受け入れてもらえなくなっている」(テレビ局関係者)
現在まさに、4月スタートのテレビドラマが続々とクランクインしている時期だが、スタッフたちは感染リスク回避と撮影スケジュール調整に頭を悩ませ続けているという。
「個人的には、石原さとみの新ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)は大丈夫かな? と心配しています。医療モノの場合、本当の病院で撮影することもありますが、このご時世で撮影許可を出してくれる病院があるのかどうか……そこで感染者が出たらシャレになりませんからね」(同)
こうした事態の中、制作者たちとしても撮影させてくれという無理強いは当然できない。とはいえ、撮影地等の変更はそのままコストになって跳ね返ってくる。
「ドラマなら代わりのロケ地をすぐ探しますが、見つからない場合はスケジュールが伸びるなどして、結果として予算がかさみます。2019年10月の台風19号でも同じような事態を経験しているので、現場スタッフたちは『またかよ』と頭を抱えていますよ」(同)
なお、ロケが難航しているのはドラマだけではない。“街歩き系”のバラエティや街頭インタビューなど、アポなしで一般人と絡むロケもリスクを考え、控えられるようになっている。さらに、悪影響はこれだけにとどまらない。
「4月クールの新番組に向けて、そろそろ出演者たちによる記者会見やインタビュー稼働が組まれる時期ですが、それも危ぶまれています。各種媒体の記者やカメラマンが大勢集まるので、当然リスクがある。会見の配信や、遠隔でのインタビューといった代替策をとるテレビ局も出てくるかもしれません」(同)
番組の宣伝をするためには、こうしたパブリシティ取材の場は欠かせない。それがなくなれば、放送前に十分な宣伝ができず、視聴率に悪い影響が出る可能性もある。また、取材をする側も、特にエンタメ系ウェブ媒体やテレビ誌では、改編期にはそうした記事を掲載することを見越して動いている。特に、誌面に穴を空けるわけにいかない紙媒体は影響が大きいだろう。
一方で、こうした新型コロナウイルスの影響が生んだ“ラッキー”な側面も一部にはあるという。前出のテレビ局関係者がこう続ける。
「3〜4月の舞台や映画の撮影が飛んだ役者さんが多いため、『◯◯さん、予定空いたらしいよ』という情報がよく入るようになりました(苦笑)。特に舞台は長期間にわたってスケジュールを押さえているため、なくなるとぽっかり空いてしまう。おかげで、スケジュール都合で諦めていたキャスティングが実現するケースもあるにはあります。救いはそれくらいですね……」(同)
この自粛ムードがいつ終息を迎えるかわからないまま、本格的な春が近づいてきている。これからしばらくテレビを見るときは、制作者たちの苦労と工夫に思いを馳せながら楽しむのもいいかもしれない。