『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』人が集まることの意味と力「映画館に暮らす一家の物語 ~廃墟に移住した切替家の6年~」

2020/03/09 19:49
石徹白未亜(ライター)

人が集まりにくい今思う、人が集まることの意味と力

 桂いわく、大館の人が年に一度でも映画館に足を運べば映画館の収益は賄えるそうだが、常に経営はカツカツだという。新型コロナウイルスがさらに追い打ちをかけてしまったのではないかと心配だ。

 「人が集まること」に対し抵抗が大きくなった今だからこそ、人が集まる場の持つ力や意味を思う。義典と桂は廃墟だった映画館を復興させ、映写技師を雇い、ボランティアで絵看板を描く人も訪ねてくるなど、「人が集う場」を作った。絵を描くのが好きなボランティアはいきいきと絵を描き、ストーブであぶったイカで満足げに一服していたのが印象的だった。「ここに来たら何かいいことがあるのでは」と思える場所がある人は強いし、そういう場を提供、維持できる人も凄いと、今改めて思う。

 先日別件の取材で、浅草ロック座に足を運んだ。今この厳しい中で興行を行い、そこに足を運ぶ観客たちがいるという事実には、強く励まされるものがあった。ネット上でなく、目の前に人が集まるというのはそれだけで何か特別な力を持っている。御成座もそういう場所の一つなのだ。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「3つの病と闘う怜奈 ~結婚5年目のさざ波~」。福田怜奈33歳。幼少期からさまざまな病気と闘っており、外出時には杖が欠かせない。自身が糖質制限を余儀なくされているため超低糖質のスイーツを販売する会社を始める。夫の竜平は怜奈を献身的に支えるも、妊活より仕事を優先する怜奈に不満もあり……。夫婦の不協和音は解消できるのか?


石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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いとしろ堂

最終更新:2020/03/09 19:49
日本の廃墟
『男はつらいよ』を愛する男ってなかなかちょっと……