コラム
【連載】傍聴席から眺める“人生ドラマ”
認知症の女性から1900万円奪った訪問介護員――「家族に相談できない」一人で抱えた悩みとは
2020/03/01 19:00
さらに、弁護側証人としてM子の夫が登壇したのですが……。
検察官 前回の逮捕では、夫が「監督する」と言っていたが?
M子の夫 (M子を)監督できなかった、悔しい。そばで見守りたい。家族で支えたい。
と、一見“妻を支える良き旦那”のようなことを言いつつ、別の場面では
M子の夫 金の管理は女房に任せていた。前回の保釈金をどう(工面)したのかは把握していない。
と話していました。他人の金を盗んだM子が一番悪いのは当然ですが、こうした家族の“非協力的”な部分が、彼女をそうさせてしまったとも感じます。しかしその一方で、検察官がM子に「自尊心とプライドと傲慢なところが(事件の)原因」とバッサリ切り捨てていたので、遊興費などあまり同情できないものに使うため、金を盗んでいた可能性も。傍聴席で話を聞いているだけだと、そのへんの詳しいことがわからず、モヤモヤが残ってしまいました。
裁判長の「訪問介護は信頼されてこそなのに、あなたは裏切ってしまいました。今回の処遇についても、周りに相談していないことが、むしろ不審に思われるのでは?」という言葉は、この裁判のまとめとして、とても的確だったと思います。他人に迷惑をかけたくない気持ちは誰しも持っているでしょうが、やましいことを隠せば隠すほど、自分の信頼は失われていく。2度目の逮捕で、M子がそれに気づいたと信じたいものです。
高齢化で今後ますます需要が高まるだろう、訪問介護。実際に利用中で助けられている方や、訪問介護員として働いている方のためにも、もう二度と起きてほしくない事件でした。
最終更新:2020/03/01 19:00