コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

石橋貴明、「モテる」に重きを置かない若者とのギャップ――「40年ぶりレギュラーゼロ」報道に思うこと

2020/02/20 21:00
仁科友里(ライター)

 石橋の出演番組を見ていると、彼の女性に対するスタンスが特徴的であると、私は感じる。石橋は最初の結婚をしている際も、妻ではない女性と親密な関係であることを自らほのめかし、女性に関する性的な冗談もよく口にしていた。また、モデルや女優といった女性共演者はほめそやす一方、芸人・友近のネタを『うたばん』(TBS系)で見た際、ネタの精度には触れずに、繰り返し「脚短い」と語るなど、女性を見たらまず容姿に触れるクセがあった。

 「それが許されていた時代だった」と言ってしまえばそれまでだが、石橋がオンナ遊びを隠さなかったり、女性の容姿に触れずにいられなかったのは、モテることや、美しい女性と交際することをステイタスと考えていたからではないだろうか。石橋のような数少ない“成功者”は、自分の中の「美しい」という枠にあてはまらない女性を「自分にふさわしくない存在」として、けなしてもいいと思っていたのかもしれない。

 ステイタスと言えば、石橋はかつてバラエティー番組で、「JJ」(光文社)の表紙を飾った女優・石原真理子と交際したかったと話していたことがある。石原と言えば、不思議ちゃん系の女優というイメージを持つ人もいるかもしれないが、大田区田園調布育ちの社長令嬢で、小学校から上皇后さまのご出身大学の付属校に通っていたお嬢さまなのである。芸能界に入ってからは清純派女優として人気を博した。石橋は、石原のように育ちと見た目が良く、人気者という高嶺の花のような女性が好みなのかもしれない。石原とは交際しなかったようだが、石橋の現在の妻、女優・鈴木保奈美も、トレンディードラマの女王として高い人気を誇っていた。お笑いの世界では、売れているタレントでも、一般人女性と交際および結婚することも珍しくないが、石橋の場合、ステイタスの高い女性を妻にして、さらに自分のステイタスを高めたいと思っているように感じるのだ。

 もし石橋が、そのように信じて、またモテることを是とするなら、若い世代と価値観が乖離していると言わざるを得ないだろう。「若者の恋愛離れ」という言葉を耳にしたことがある人も多いだろうが、結婚相談所「オーネット」が発表した、2020年に成人式を迎える男女を対象にした「恋愛・結婚に関する意識調査」によると、「現在、交際相手がいる」のは29.6%だそうだ。2017年~19年には、交際相手がいる率は3割を超していたそうだから、数字で見ると、恋愛している若者は徐々に減っていることになる。交際相手がいないことの理由はいろいろあるだろうが、個人的には多くの若者は「モテること」に重きを置いていないように感じている。

 となると「売れてのしあがり、ステイタスの高い女性と交際もしくは結婚する」という、石橋の人生訓もしくは成功譚そのものが、若い人にはピンとこないのではないだろうか。

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