コラム
オンナ万引きGメン日誌
萬田久子風の万引き犯に「早く死ね、ばーか」と逃げられて……Gメンの犯した“完全なミス”
2020/02/15 16:00
容易く近寄れない店長さんの雰囲気に気圧され、なるべく静かに事務所を出た私は、汚名を返上するべく現場に戻ります。膝の痛みが治まらないので、なるべく歩かないで済むよう、メインの出入口近くに陣取って入店者のチェックをすることにしました。そうしているうちに、入店直後から不審な動きをする60歳代と思しき男性を発見。その後を追えば、カップ酒やおにぎり、ホタテの缶詰などをポケットに隠して、なにも買うことなく平然とした様子で店から出ていってしまいます。さほど動きも早くないので、首尾よく声をかけるまでに至り、素直に認めた男を事務所に連れていきました。
「すみません、魔が差しちゃって。お金払いますので、今回だけは勘弁してください」
「金あるなら、ちゃんと買えよ。今回は勘弁してあげるけど、もうウチの店には、二度と来ないでくれるかな?」
手を合わせて懇願する男を見下ろしながら、凄むように店長さんが言うと、深くうなずいて応じた男が、ポケットから取り出した財布の中から1枚のカードを抜き取って言いました。
「ポイントで支払います。もう来ちゃいけないなら、電子マネーも精算しちゃってください」
万引きした商品の支払いに、ポイントを利用する人は初めてのこと。逃げられて罵倒された悔しさや膝の痛みも忘れて、ついつい笑ってしまった次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)
最終更新:2020/02/15 16:00