中学受験でミラクル合格! 月額20万円“課金”で偏差値アップ、「勝ち組親子」が入学後に見た地獄
ところがトップ校S中学は甘くはない。入学直後から「勉強するのは当たり前」という空気に満ちていたという。授業は先生のオリジナルプリントで進むことが多く、しかも進度が速い。これに加え、毎日、山のように宿題を与えられるので、その日、その日の授業をしっかり聞いて、大量の課題をきちんと提出しなければ、アッという間に「多重債務者」状態――複数の教科で“わからないことだらけ”になるのだそうだ。
龍平君は、中1の夏休み明けには、早くも「落ちこぼれ」の自覚を持ったためか、元気がない様子だったという。
加えて、学校から「このままでは進級できない」との“警告”が入る。彩子さんは焦り狂い、「トップ校落ちこぼれ生徒専門の塾」に龍平君を入れて、どうにか進級させようと足掻いていた。
そして中1の終わり頃。その塾の先生から電話があり、「龍平君が最近、塾に来ないので、来る気がないなら退塾してほしい」と言われたそうだ。
絶望に打ちひしがれた彩子さんは、その夜、遅くに帰って来た龍平君を問い詰める。
「なんで塾に行ってないの? このままだと、龍平は高校に上がれないよ! 恥ずかしいと思わないの!?」
その言葉がスイッチになったがごとく、龍平君はそこら中の物を壁に投げつけて、こう叫んだという。
「もう、うんざりなんだよ! 勉強、勉強って! てめぇ、嘘つきやがって! 『Sに入ったら、楽しいよ! 苦しいのも(中学受験の)今だけだからね!』って言ってたの、誰だよ!てめぇの言うことなんて誰が聞くか!」
そして、そのまま自室に引きこもってしまったらしい。
彩子さんは物が散乱したことよりも、昨日まで自分のことを「ママ」と呼んでくれていた我が子が、獣のような目で「てめぇ」と呼んだことがショックだったという。
「考えてみればそうですよね。Sは私立中学の中でも、高偏差値の子が行く学校。つまり、自学自習ができ、自分のやるべきことが自分でわかっている子が行く学校なんですよ。龍平はまだそれができる段階ではなかった。プロ家庭教師による“詰め込み”という付け焼刃の勉強で、たまたまミラクル合格をしただけだったということを、もっと理解しておけば、こんなことには……」
龍平君はほとんど学校には行っていなかったため、併設高校への進学は認められなかった。あれから10年近くの時が流れた。今も龍平君はほとんどの時間を自室で費やしていると聞いている。