SF9「One Love」から紐解くK-POPとFrench House――Abba・DAFT PUNKにつながるEXO他17曲
――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。1月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!
今月の1曲‖SF9 – One Love
今回の活動でデビュー4年目にして音楽番組初1位を獲得した、FNC Entertainment所属の9人組ボーイズグループSF9。1位おめでとうございます。タイトル曲の「Good Guy」はとても良い4つ打ちですが、今月は今回リリースされたアルバム『First Collection』の収録曲「One Love」を紹介したいと思います。
今回のキーワードは「French House」。French Houseといっても、すぐにどういうものなのか思い浮かばない方もいるかもしれませんが、先月の記事で2019年にリリースされたEDM楽曲として紹介したDONGKIZの「Fever」はFrench Houseと呼べるでしょう。
これまでの記事で解説してきたジャンルと同じように、French Houseもさまざまなジャンルからの影響を受け、段々と形作られました。「House」とついているように「Funk House」「Funky House」などのジャンルと並行して、「Euro Disco」「Space Disco」「Deep House」などの影響を受け、90年代中盤に生まれた4つ打ちでBPMは110~130ぐらいまでのものを言います。
時を追って説明していきますが、時は遡り70年代中盤にアメリカから始まったDiscoのブームは世界中に広がり、スウェーデンからはABBA、ドイツからはArabesque、Boney M.、Dschinghis Khan、フランスからはHot Blood、Cerroneなどヨーロッパの国単位でたくさんのアーティスト・グループが出てきました。それらがアメリカ・イギリスとは差別化され、70年代後半に「Euro Disco」というジャンルとして確立していきます。
■Abba – Dancing Queen
■Boney M. – Sunny
■Hot Blood – Soul Dracula
■Dschinghis Khan – Dschinghis Khan
自国での担い手が増えると自然と幅も広がり、フランスでは派生ジャンルとして1977年頃~80年代前半にかけてSpace Discoと呼ばれる、サウンドもビジュアルも未来・宇宙的テーマを取り扱ったジャンルが流行します。映画『スターウォーズ』シリーズが77~83年にかけて公開されており、少なくともそこからの影響がなかったことはないでしょう。
■Space – Magic Fly
■Sheila &Black Devotion – Spacer
Euro DiscoからSpace Discoが派生したように、80年代はItalo Discoが生まれ、80年代後半に作られるEuro Discoはスペインとギリシャ、ポーランドやロシアが生産のメインになっていきます。90年代に入ると、House、Acid Houseなどから影響を受け、Euro Discoのスタイルは段々と変わっていきます。
そんなEuro Discoの最終形態がFrench Houseと言われており、もちろん少しはEuro DiscoやSpace Discoの影響を受けていますが、どちらかというと70、80年代のアメリカのダンスミュージック、P-Funk、Chicago HouseのJackin’(Jazz)的な部分を取り入れています。HouseやTechnoのリズムにそれらをはめ込み、そこにフィルター系のエフェクトを加えたもので、ファンキーなギターのサウンドと上ネタのシンセなどに特徴があります。