“教育の憲法”教育基本法を改悪した安倍政権の狙いは?――「自己責任論」の徹底で縮小された教育行政の責任
特集の第1回ではフェミニズムへのバックラッシュ、第2回では24条改憲による女性の権利後退を取り上げたが、第3回では教育行政の歩みと国による家庭教育への介入に迫ってみたい。
【第1回】女性やマイノリティの権利、女性運動はなぜ“後退”したのか――バックラッシュ~現代に続く安倍政権の狙いを読む
【第2回】家庭内に押し込まれる子育て・介護、DV、虐待問題――安倍政権と保守派の「24条改憲」の狙いは何か?
安倍政権は2006年、“教育の憲法”とも称される教育基本法を「改正」した。教育基本法は、国が国民の教育に責任を負うこと、権力が教育をゆがめないことを掲げるなど、国家への責務を規定するものだった。しかし、「改正」後は、国民への直接的な責任を放棄し、日本の伝統や愛国心を育むことを教育の目標とし、なにより家庭での教育に関する条項を新設するなど、教育の責任が国民に向けられるようになった。
この「改正」を受け、自民党が国会へ上程しようとしているのが「家庭教育支援法」である。この法案(仮称、2016年10月20日時点素案)では、子どもの教育の第一義的責任を保護者(家庭)に求め、「地域住民」までが家庭教育への協力を求められている。自己責任論があらゆるところに根を張っている現代においては「子の教育の第一義的責任は保護者に」という文言に疑問を持つ人は少なく、問題が認識されにくい。一方、家庭教育支援法案や文部科学省が行っている家庭教育支援の施策のベースになっているのは、安倍政権に近い一般財団法人「親学推進協会」の「親学」なる教えで、科学的実証の乏しい脳科学や、史実的にも疑問の残る「江戸しぐさ」に論拠を求めている点で、多くの批判が寄せられている。
そこで今回は、実践女子大学の広井多鶴子教授に、これまでの国の教育行政の指針を振り返りながら、教育基本法・家庭教育支援法の問題点を解説してもらった。