専門医インタビュー

生理前だけ“うつ病”に!?  PMSより強いイライラや情緒不安定を招く“PMDD”とは

2019/12/25 21:00
サイゾーウーマン編集部

 生理前に、心身の不調に悩む女性は少なくない。胸が張る、過度の眠気、肌荒れ、食欲が増す、便秘、集中力低下、イライラする、無気力感といった症状をもたらす「PMS(月経前症候群)」はよく知られているが、PMSより精神的症状の深刻度合いが大きいとされる「PMDD(月経前不快気分障害)」という疾患をご存じだろうか。 PMSと比較して認知度が低く、またPMSと勘違いされることもよくあるというPMDD。そこで今回、その実態を探るべく『月経の前だけうつ病になってしまう女性たち―PMDD(月経前不快気分障害)を治す』(講談社)『月経前不快気分障害(PMDD)』(星和書店)などの著者である東北医科薬科大学・山田和男病院教授に、PMDDの症状や治療法についてうかがった。

PMDDは“うつ病”の一種!? PMSとの違い

――「PMDD(月経前不快気分障害)」とは一体なんでしょうか。

山田和男医師(以下、山田) 一言で表すと「月経の前ごとに(非定型)うつ病を呈する疾患」です。医学的にうつ病の一種だと考えられており、具体的には生理前の7~10日間程度、過食と過眠、全ての物事がつまらなく感じる、絶望的な気持ちになる、自己卑下、強度の不安やイライラ、情緒不安定といった抑うつ症状が続きます。また、否定的なことを言われると涙を流してしまったり、些細なことでもカッとなって、職場や家庭で口論をしてしまうことも。さらに、疲れやすく集中力がないといったうつ病によくある病状が出る方もいますね。

――PMSにも精神症状がありますが、PMDDと明確な違いはあるのですか。

山田 確かに、PMSとPMDD は似た症状ですが、精神医学の診断上、別の疾患なんです。PMSは体の不調が中心で、PMDDは精神的な症状が強く現れます。PMDDはすでに、アメリカなどの海外で、うつ病の一種として認知度が上昇しているものの、日本ではあまりなじみがないため、PMSとPMDDを混同する臨床医が多いのが実情です。


 PMSにはないPMDDの特徴を見ていくと、PMDDは生理前の7~10日間ぐらい“だけ”、抑うつ気分がうつ病に匹敵するほど重症化し、“社会的機能”がガクッと落ちます。具体的には「学校や仕事を欠席せざるを得ない精神状態になる」「仕事の効率が著しく下がる」「周囲の人間と口論になる」「子どもを言葉の暴力で傷つけてしまう」など、つまり日常生活に支障を来すほどの症状であれば、PMDDの疑いがあります。自身でコントロールできる程度のイライラであればPMSだと考えられるでしょう。

 また、うつ病と比較すると、うつ病の場合は、上記のような症状などが2週間以上続きますが、PMDDの場合は生理が来ると必ず消えます。ほとんどの患者が月経の1~2日目に精神症状がなくなりますね。そして、また生理の7~10日前ぐらいに病的な不安や抑うつ気分になり、それが月経周期に沿って繰り返されるわけです。

――PMDDを発症する誘因はわかっているんですか。

山田 何らかのライフイベントを契機に発症することが多いと言われています。実際に診察していると、20代以降の人に多く、就職や転勤、結婚、出産、介護など大きなライフイベントと密接に関係していることがわかっています。

月経前不快気分障害(PMDD)/山田和男