「宮内庁御用達」は怪しい制度!? “皇室ブランド”にあやかるアウトな商売とは【日本のアウト皇室史】
皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な天皇家のエピソードを教えてもらいます!
「宮内庁御用達」は廃止された制度!?
――最近、ネットで話題になったのですが、「宮内庁御用達」ってもう廃止された制度なんですよね? いまだに、その言葉を全面に押し出している商品もあるような気がしますが……。
堀江宏樹(以下、堀江) そうですね。そういう公的な制度は、1954(昭和29)年にすでに廃止されているのです。
驚くかもしれませんが、「宮内庁御用達」という日本語自体、“怪しい”んですね。「皇室への納入品」と、“役所”である「宮内庁への納入品」は異なる単語で呼ばれています。皇室への納入品だけが「御用達」。役所である宮内庁への納入品は「御用」。だから、「宮内庁御用達」と言ってしまっている時点で日本語的にもおかしいし、要するにそういうふうに宣伝すればするほど、「怪しい」のです(笑)。
――そんな明確な違いがあったなんて驚きです。皇室ブランドが商品の付加価値になると思うから、「宮内庁御用達」と名乗るのでしょうか?
堀江 そうですねぇ。現代の日本で、「宮内庁御用達」を自称する商品は、「皇族の方が“一度”、買ってくれた」だけの物とか、へたすれば「プレゼントすると申し出をして、結果的に皇族の方に受け取ってもらえたことがある」程度のものも多いそう。コマーシャルには絶対に出演してくれない“セレブリティーの中のセレブリティー”ですから「ご愛用の品になりたい!」という、店側の思いがすごいのでしょう。
江戸時代の参勤交代中、大名が滞在している旅館に商人たちが押しかけ、われ先に献上品を押し付けようとしたという話と似ているな、と思ってしまいます。
――献上品ですか。もらえるのであれば、もらっておけば良いのでは?
堀江 それが“タダ”では済まないのです。「わざわざ自分に品物を献上しに来た庶民の好意に応える」という形で、チップという名の支払いをしなくてはいけないのですよ。そして、チップのせいで相場以上に高めになるのです。さらに、「○○様に献上した」という事実ができてしまうので、それを相手側の商業活動に利用されてしまうことも。だから、江戸時代の大名に押しかけ献上された品物の大半は、そのまま返品されたようです。
ちなみに江戸時代の天皇家の権威は近畿地方に「ほぼ」限定されており、この手の押し売りのような献上品攻めに遭うことはなかったようです。誰に人気が集まるかは時代によって変わりますからね。
なお、現在の御用達業者の中には、「いくらで、こういう品を皇室に納入している」と情報を明かす店もありますが、トップシークレットにしている場合も多々あります。