サイゾーウーマンコラム“中学受験”に見る親と子の姿中学受験「算数」の落とし穴 コラム “中学受験”に見る親と子の姿 中学受験「算数」の落とし穴――最終模試で息子の偏差値を暴落させた、父親の「スパルタ塾」 2019/12/15 16:00 鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー) “中学受験”に見る親と子の姿 算数と数学は違う、父から息子への謝罪 塾長はお父さんに、直ちに「父能研」からの撤退をお願いし、算数と数学の思考法はまったく違うということを指摘した上で、こう言ったという。 「お父さん、受験は偏差値を上げて上位校に合格することも大切ですが、もっと重要なことがあります。それは健君に、得意の算数で、“試行錯誤しながら答えを発見する喜び”を味わわせてあげることです。どうですか? お父さんはこの2カ月、見守り役に徹しませんか?」 それから、受験本番まで、健君は塾がない日も学習室に通い、「勘」を取り戻すべく、懸命に手を動かし続けたそうだ。 塾長は、健君が教えてくれる「この問題は、こういうふうに考えてみた」という説明を、「健は大したもんだ! うんうん、このアプローチの仕方は面白い!」と大いに褒め、喜び、そして、その閃きを大切にさせるため、類題を提示したという。こうして健君は、徐々に調子を戻していったそうだ。 一方、お父さんは健君と一緒にお風呂に入りながら、自分が間違っていたことを素直に詫びたという。 「健、悪かったな……。どうやらお父さんは間違っていたようだ。今、お前がやっている算数は、限られた道具しかない状態で、どうすれば正解に辿り着けるか? ってことを考えることに意味があると、塾長先生に教えられたよ。合格も大事だが、『問題にぶち当たったとき、自分で考えて工夫できる力』っていうのは、テストでいい点を取るだけじゃなくて、人生にとっても役立つ力だと思う。お前ならやれるって塾長先生も言ってるし、お父さんもそう思うよ」 筆者が後日、塾長に話を聞いたところ、健君とお父さんの一件をこんなふうに振り返ってくれた。 「もともと、健は算数のセンスがある子だったので、自信さえ取り戻せば、残り2カ月でどうにかなると思っていました。小6の秋というのは、これまで蓄えた知識が、ジグゾーパズルのようにバラバラになりがちな時期なんです。夏の疲れもあって、たまたま成績が急降下しただけだったのでしょう。このお父さんも、一時的に迷走されましたが、息子に良かれと思って自ら勉強を見始めたとのこと。自分のやり方は間違いだったと気づき、受験勉強の意義を認め、さらに、息子に対して素直に謝ったってことですから、素晴らしいお方だと思いますよ」 健君はお父さんが理解して見守ってくれたことも功を奏し、当初から目標としていた偏差値60の第一志望校に入学し、現在、中3である。今年、彼は学園祭で仲間と共に、来年入試の算数の予想問題を発表し、教師たちを唸らせたと聞いている。 前のページ12 鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー) エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。 記事一覧 湘南オバちゃんクラブ 最終更新:2019/12/15 16:00 楽天 さわって学べる算数図鑑 算数の醍醐味を知らずに大人になってしまった…… 関連記事 中学受験生の娘は「O女子」志望! 「女子校」でイジメ経験……トラウマを持つ母の葛藤中学受験の過酷さは「ブラック企業」並み? 小6秋の「偏差値暴落」に焦った母とパンクした娘中学受験に向く子、5つのタイプーー「授業中いつも叱られていた小学生」が最難関に合格したワケ小学4年生の娘の周囲がいよいよ中学受験モードに! 習い事の先生も厳しい言葉を連発中学受験の「志望校選び」を邪魔する危険も? 親が「文化祭見学」で見誤ってはいけないこと 次の記事 元極妻が考える「反社会的勢力」の定義 >