コラム
老いてゆく親と、どう向き合う?

老人ホームを拒否した娘、認知症の母の“最期”を迎えて――「ホッとした」と職場上司が語る理由

2019/12/22 19:00
坂口鈴香(ライター)

 介護施設を運営するある医師は、たくさんの看取りをしてきて、「人は、その最期のときを自分で選ぶ」と確信したという。

 筆者は、はじめその言葉を聞いたとき「そんなわけないだろう」と思ったが、いくつかの親しい人たちとの別れを経て、その医師の言葉を実感するようになった。

 最期の瞬間に立ち会えなくて、今も後悔している別れも、この世を去る人がそれを選んだ――そう思うと、心が軽くなる。

 斎藤さんの母親も、「これまでありがとう。この辺で、行くわね」と斎藤さんに言うように旅立った。そんな気がしてならない。長いトンネルでも、介護には必ず終わりが来る。

 「これで、彼女もようやく“普通の生活”ができる」。正木さんは肩の荷を下ろした。

 だが、斎藤さんには別世帯で暮らす父親とウツで働けない弟が残されている。これから、斎藤さんはどんな生活を選ぶのだろう。

【老いゆく親と向き合う】シリーズ

父は被害者なのに――老人ホーム、認知症の入居者とのトラブル
・父の遺産は1円ももらっていないのに――仲睦まじい姉妹の本音
明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心
認知症の母は壊れてなんかいない。本質があらわになっただけ

【介護をめぐる親子・家族模様】シリーズ

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2019/12/22 19:00
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