さっき捕まえた「ヨーダ似の老婆」舞い戻ってきた!? 万引きGメンの「世にも奇妙な物語」
事務所に連れて行くと、彼女の顔を見た店長さんが、顔を真っ赤にして怒鳴りました。
「おい、ばあさん。なに考えてんだよ? あんた、さっき捕まって警察に行ったばかりだろう」
「はあ? あたし、警察になんか行ってないよ」
怒る店長さんを宥めて、先と同じ段取りで商品を出させると、計6点、1,800円ほどの商品が出てきました。どこで手に入れてきたのか、お金は持っているというので見せてもらうと、5,000円ほど所持しています。
「このお金、どうしたの?」
「どうしたのって、あたしのお金だよ」
「こんなにあるんだったら、さっきのやつも買ってくれたらよかったのに」
「さっきのやつって、なによ?」
あからさまに否認を続けるヨーダの態度を、どこかおかしいと感じた私は、通報に必要な人定事項を事故処理表に書いてもらいました。警察への通報を終えて、前件の事故処理表を手に戻ってきた店長が、それを受け取って照合します。
「あれ? 住所は同じだけど、名前が違う!」
「それ、なんて名前よ?」
店長が名前を読み上げると、苦笑したヨーダは言いました。
「それ、姉さんの名前だわ」
「ええっっ!?」
「私たち、双子なのよ」
その後、駆けつけた警察官によれば、この姉妹は所轄内で名を馳せる常習者とのこと。いつもは共犯でやるのにと首を傾げていましたが、恐らくはケンカをしている最中のため、別々に来て盗んだのでしょう。同じ日に、同じ店で、同じようなことをして、同じ人に捕まる。この奇跡が、双子だからこその能力だとすれば、もっといいことに使ってほしいものです。
ひどく重たい気持ちで警察署に戻ると、地域課の前にある廊下で、ようやくに取り調べを終えたらしい姉と、これから取り調べを受ける妹が遭遇する場面がありました。よく観察してみれば、靴とトートバッグがお揃いで、色違いのモノを着用しています。
「あら、迎えに来てくれたの?」
同じ顔で、2人同時に同じ言葉を発する双子の老姉妹を見ても、少しも可愛いとは思えませんでした。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)