「フェミニストって、なに?」座談会【後編】日常で“違和感”“疑問”を感じたら変わるとき
日本国内でも「フェミニズム」や「フェミニスト」という言葉を耳にする機会が増えてい一方で、「フェミニスト」という言葉に「怖い」「ヒステリック」「男嫌い」といったイメージを抱き抵抗感を持っている人も少なくない。そんな「フェミニズム」に対する疑問のあれこれを、前回に続きフランス語翻訳家の相川千尋さん、編集・ライターの赤谷まりえさん、フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』を制作しているデザイナーの宮越里子さんとsuper-KIKIさんに投げかけた。
【座談会出席者プロフィール】
相川千尋……フランス語翻訳家。スウェーデン発の女性器・生理コミック『禁断の果実 女性の身体と性のタブー』(花伝社)の翻訳を手掛け、ヨーロッパの性関係書籍に造詣が深い。現在は、フェミニズムについてのコラムも執筆している。
赤谷まりえ……編集・ライター。日本とアメリカの大学でジェンダーを学び、女子中学生向け情報誌において同誌初となる“性のお悩み相談コーナー”を設け、思春期が持つ性への疑問の解消に努めた。
宮越里子……グラフィックデザイナー。「AERA×LUMINE」、あっこゴリラ・『GRRRLISM』、『ミュージック・マガジン』(ミュージック・マガジン)『ウーマン・イン・バトル』(合同出版)装丁など、エディトリアル、グラフィックデザインを中心に手がける。共同制作として、フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』企画・デザイン担当。
super-KIKI……2011年よりデモや抗議活動に参加しながら自分の身の周りに起きている問題から感じ取ったメッセージを、シルクスクリーンやステンシル等DIYツールを使いアパレルグッズなど身につけられるものに落とし込んだアイテムを中心に制作。『NEW ERA Ladies』ではイラスト、ファッション、漫画レビューを担当。
(■前編:「フェミニストって、なに?」座談会【前編】ネットでヒステリックで怖いと言われるのはなぜ?)
“クソリプ”から見えた、女性を見下す社会構造
――フェミニズムの看板を掲げてSNSをやっている中で、クソリプ(まったくの見当外れで、気分を害するような返信)や心ない言葉を投げかけられたことはありますか。
全員 ありますね。
super-KIKI(以下、KIKI) 去年の4月に新宿の東口で「私は黙らない」という街宣をやったんですよ。財務省の福田淳一前事務次官が女性記者にセクハラをした時、麻生太郎副総理兼財務相が「こいつの人権はないのか」みたいなことを言ってかばったことがきっかけで、友人のフェミニストたちが声をあげて抗議街宣をやることに。10人ぐらいで写真を撮って、「FUCK SEXISM」と言うあおりをつけて、SNSに告知画像をアップしました。
宮越里子(以下、宮越) その写真自体はちょっとギャング風で、いわゆる「女性らしい」とされるイメージからは離したんです。
KIKI 私たちは意図的に下品と言われる言葉を使って「女性らしさから抵抗する」表現をしたんですけど、それが案の定炎上して。下品だっていう批判ならまあその通りなんで(笑)わかるんですが、「FUCK SEXISM」をGoogleで翻訳した人から、「『性差別とセックスしろ』っていう意味なんだけど大丈夫ですか(笑)?」という誤訳が送られてきました。この文言は、世界中の運動で使われているポピュラーなものだし、最初は「アホだな〜」とスルーしていたんですけど、それがもともとの告知投稿の倍近くRTされてまして。バイアスかかってない状態だったら、多くの人が誤訳だってわかると思うんです。でもそれを「こっちが正解だ」と歪曲せずにいられない。こうやって無理矢理にでも女性をバカな存在だと仕立て上げていく、社会的位置を下げていく。そうして今の男性優位社会が作られるんだなーと身に染みてわかった瞬間でしたね。
あとは、「ブス」みたいなのはしょっちゅう来る。それが「女を傷つけるワード!」って思っていたら勘違い。そういうとこだぞって感じですね。
宮越 そうそう、「モテない」とかね。女性は男性に評価されて当然っていう思い込みが激しすぎる。「女は全員男が好き」「顔で人の価値が決まる」「全ての人に恋愛感情が必ずある」っていう前提は視野が狭い。見た目が「女性っぽい」からって、性別や性的指向、愛についてまで勝手にカテゴライズしてくるから想像力がないんだなって、同情しちゃいます。