天皇の“愛人”だった女官たち……知られざる皇室ロマンスと女の牢獄【日本のアウト皇室史】
皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な天皇家のエピソードを教えてもらいます!
天皇による“愛人女性”の青田買い!?
――前回のラストでは、戦前の御所に仕えていた女官たちの“秘密”の私生活に、お話がおよびました。
堀江宏樹(以下、堀江) ただね、上級女官になればなるほど、御所暮らししていたことの記録をほとんど公(おおやけ)にはしていません。しかし、前回も出てきた大正天皇生母の柳原愛子(やなぎわら・なるこ)こと「早蕨典侍(さわらびのすけ)」さんは、姪の柳原白蓮(やなぎわら・びゃくれん)に、いろいろぶっちゃけトークしちゃってるんですね。
――柳原白蓮といえば、NHKの連続テレビ小説『花子とアン』で女優・仲間由紀恵が演じた、主人公の「腹心の友」・蓮子(れんこ)さんのモデルでしたっけ。
堀江 そうそう! 大正天皇の従姉妹にあたる公家華族出身の女性なんですけど、政略結婚させられた夫を捨て、若い恋人と駆け落ちしたりするから、華族から除名されちゃった「不良」です。だからというか、因習には縛られないんですね、白蓮さんは。
叔母の柳原愛子がこっそり語った御所の内実を、彼女は書き残してくれています(笑)。例えば、美少女として有名だった柳原愛子には10歳を過ぎたころから、御所、つまり明治天皇から「私の女官にならないか?」というお誘いが頻繁に来たそう。これは天皇による“愛人女性”の青田買いみたいなもの。しかし、天皇の本当の目的に気付いた父親が、申し出を拒むのですね。娘にはちゃんと“正式”に結婚させてやりたい、と。すると明治天皇ではなくて、「明治天皇の母君にあたる英照皇太后にお仕えしないか?」と持ちかけられ、断れなかったといいます。
――そんなに熱意を伝えられたら、断れないかも……。そして?
堀江 毎日のように明治天皇は、英照皇太后のところにご機嫌を伺いにやってきて。結局、それは柳原愛子狙いということが誰の目にも明らかになり、2人は恋仲に……。
愛子は明治天皇との間に2人の皇子と、1人の皇女を生んだけれど、そのうち2人の皇子は幼くして亡くなってしまいます。すると、御所では「『小倉の局』なる女官の祟りだ」とささやかれたそうです。