インフルエンザ予防に「紅茶」は真っ赤なウソ!? 「予防接種が一番」と感染症の医師語る
――やはり、インフルエンザ対策には、予防接種を打つというのが一番なのでしょうか。
岩田 そういうことです。インフルエンザ予防には、ワクチンが最も効果的だとわかっています。私には小学生の娘がいるのですが、学校から「手洗い、うがい、マスクでインフルエンザを予防しましょう」との呼びかけがあり、「なぜ、『インフルエンザワクチンを打ちましょう』と言わないのか?」と、疑問を抱いてしまいます。経済的にワクチンを打つことができないご家庭に配慮しているようなのですが、私は、助かる人がいるのであれば、助かるように推奨すべきだと考えます。全員横並びで助からない、という変な平等思考は間違っています。
――なぜ、食品や生活習慣からインフルエンザを予防しようという動きがなくならないのでしょうか。
岩田 そうしたネタは、“セクシー”だからです。アメリカでもそのような言い方がされています。「病院で予防接種を打つ」より「自然食品で病気の予防をする」方が、何だかファッショナブルでカッコいいし、もっと言うと、人に「意識が高い裕福な人が実践しているようなイメージ」を抱かせるのです。この世には、有名人しか知らない特殊な健康法があるなどと言われますが、そんなことはあり得ませんし、有名人発信の健康法がデマであることもよくあります。健康に効くことは全部公開されており、「みんなが知っていること」の方が、確実なのです。現実世界は、そんなセクシーにできていないということを、心に留めておいてほしいと思います。
岩田健太郎(いわた・けんたろう)
神戸大学医学部感染症内科教授。1997年島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院研修医、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院内科研修医を経て、アルバートアインシュタイン大学ベス・イスラエル・メディカルセンター感染症フェローとなる。2003年に中国へ渡り北京インターナショナルSOSクリニックで勤務。04年に帰国、亀田総合病院(千葉県)で感染内科部長、同総合診療・感染症科部長歴任。08年より現職。