中学受験の「志望校選び」を邪魔する危険も? 親が「文化祭見学」で見誤ってはいけないこと
さて、筆者が文化祭に行くときには、普段「日陰」の存在とも言われる目立たない部活のブースを必ず覗くことにしている。そこにいる生徒たちに展示品の説明を受け、苦労した点を聞き、彼らが感じる学校のアレコレまでをも教えてもらっているのだ。一見、目立たないと思える活動をしている生徒たちが、プライド持って、そして充実した学園生活を送っていると感じたならば、その学校は多分、“間違いない”。
敬子さん(仮名)も、筆者と同じことを実感した経験があるそうだ。彼女は、引っ込み思案で消極的な息子・聡君(仮名)に合う学校を探す中、T学園文化祭に足を運んだ。
聡君は、生物部ブースで行われていた「蚕の解剖」を楽しみにしていたそうだが、聡君の番になった時に、肝心の蚕がなくなってしまった。普通ならば、そこで閉店ガラガラだが、その時、高校生たちは、非常にガッカリしている様子の聡君以下、小学生数人を連れて、広大な学園敷地内での“虫取りツアー”を敢行したのだ。
迅速に顧問の先生の許可を取り、用具を集め、探検隊を結成してくれたことに、敬子さんは感激したという。その時、生物部の部長は、小学生の母たちに向かって、こう告げたという。
「森の中で、藪やらもあるのでヒールでは危険です。お母さんたちはどうぞカフェテリアででも自由にくつろいでいてください。僕らが責任を持って、“隊員”たちをお預かりします」
そして1時間後、聡“隊員”と敬子さんは無事に再会したそうだ。虫嫌いの敬子さんいわく、そこには「気持ち悪い虫」をたくさん採って満面の笑みを浮かべる聡君がいたそうだ。
聡君は当然のようにT学園に入学し、あこがれの生物部に入部した。
敬子さんに聞いたところ、現在中2の聡君は相変わらず、学園内で「気持ち悪い虫」を採り続けているという。「生物部は、いわゆる花形の部活ではないかもしれませんが、文化祭で見た部員たちの姿が輝いていましたね。意中の学校に出会えてうれしいです」とのこと。また、これを書くにあたり、聡君から「学校生活は『楽しくて仕方ない』」という感想をいただいた。将来は生物学者になるのだそうだ。
文化祭には、将来の夢を決定付けるこういう出会いもあるということをご紹介した。
(鳥居りんこ)