TWICEのアルバム『Feel Special』がスゴいワケ――BTS、SHINeeなどK-POPと2stepの関係
――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。9月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!
今月の1曲‖TWICE – Feel Special
TWICEの新アルバム『Feel Special』からタイトル曲の「Feel Special」です。この曲はJPYの社長パク・ジニョンとTWICEのメンバーとが対話した中から歌詞が作られ、これまでのリリースを経た等身大の彼女たちを表現する内容になっていると話題ですが、私は音楽的な面から説明しようと思います。
まずはティーザーとして出た、このイントロ動画をご覧ください。
9月18日の0時にリリースされたこれを聞いたとき、5~8小節目のキックの打ち方から「2stepだ!!!!」と、ついにTWICEが2stepをやるのかと興奮して夜中に騒ぎました。
結局は、イントロのこの部分のみドラムの打ち方が2stepだっただけで、曲全体としてはK-Pop定番の、フレーズ毎に微妙にジャンルが変わっていくトラックで、完全に2stepとは言い切れないですが……と、そのままアルバムを聞いていくと実は次の2曲目「RAINBOW」が全体的に2stepに近いトラックになっています。
ということで、今月は2stepについて説明します。
まず「2step」とは「2step Garage」を短縮したものです。「Garage」は、アメリカ・ニューヨークの「Paradise Garage」というクラブで、DJのLarry Levanがかけたソウルやディスコ、ロック、ジャズ、ラテン楽曲のことを総称して言ったものです。
Paradise Garageがオープンした1977年は、世界的なディスコブームがピークで、ニューヨークのディスコ(今で言うクラブと同じようなもの)はBee Geesなどのアーティストを中心に、白人文化の象徴でした。一方、Paradise Garageの客層はアフリカンアメリカンやヒスパニックが中心で、そこではLarry LevanによってR&Bやラテンをベースにソウルフルなボーカルが乗った楽曲が多くプレイされていました。ちなみに、先述のようにParadise Garageは人種的マイノリティやゲイの方が多く集まり、Larry Levanが面接をして通った人のみが通える会員制で、 主要な客層だったアフリカンアメリカン訛りでGarageを「ガラージ」もしくは「ガラージュ」と発音します。 そこから、今もジャンルとしてのGarageはガラージと発音しま す。
音楽のジャンルとしては多岐に渡るため、楽曲を複数挙げてもあまり関連性が感じられないかもしれませんが、Larry Levanミックスの曲を1つ挙げます。
■Inner life Feat.Jocelyn Brown – Ain’t No Mountain High Enough(The Garage Mix)
このLarry LevanがParadise Garageをオープンする前から、ニューヨークのアンダーグラウンドなゲイパーティーシーンに共に関わってきたのがFrankie KnucklesというDJで、彼は後にシカゴに拠点を移しHouseというジャンルを確立するのはまた別の話ですが、このような成り立ちからGarageとHouseは密接な関係があり、「Garage House」と言ったりもします。
87年にParadise Garageは閉店しますが、それらの楽曲のBPMを速くしたものが90年代中盤に「Speed Garage」としてイギリスで生まれます。遡って、90年代初頭からイギリスでプレイされるGarageを「UK Garage」と総称するようになり、Paradise GarageでプレイされていたGarageは「US Garage」と区別されるようになります。
ここで、2step Garageに至るまでのジャンル、 代表曲を紹介したいと思います
関連曲‖それぞれのジャンルの代表曲
■24 Hour Experience – Together
UK Garageのクラシックとされる1曲。
■Double 99 – RIP Groove
Speed Garageのアンセムです。
この流れから段々と2stepが形作られていき、97年の下記楽曲が2stepの走りと言われています。
■Tina Moore – Never Gonna Let You Go (Kelly G. Bump-N-Go Mix)
2stepの楽曲はBPMが130前後で、ソウルやR&Bの歌モノの楽曲がBPM65前後なことから、そのボーカルをサンプリングして楽曲を作ることもできるし、DJのプレイでも65と130を行ったり来たりできることから、たくさんの楽曲が作られ、チャートを席巻して行きます。
■Sweet Female Attitude – Flowers
■Artful Dodger Feat. Craig David – Re-Rewind
一般的なGarageやTechnoは、1小節4拍の中、4拍の頭全てにキックが等間隔で打たれ、スネアは2、4拍の頭に打たれます。そのような楽曲を、キックを等間隔で4つ打つことから総称して「4つ打ち」と呼びます。2stepはこの4つ打ちのように、キック4拍を等間隔に打たず、2拍目と4拍目が少しずれて打たれ、抜け落ちたように感じることから1拍目と3拍目が強調されて聞こえ、1小節の中にリズムの“ノリ”の重点が2つあるところから、2つのステップ=2stepとなります。昨今はUK Garageと2stepがあまり区別されず、UK Garage/2stepと並列に書かれることが多いです。
と、ここまで説明したところでK-Popの2step楽曲をいくつか紹介したいと思います。