「要介護1、2の保険給付外し!?」と大騒動! 親は、家族はどうなる――介護のプロが語る
お二人の意見を聞いて、どう思われただろうか。正直に言うと筆者は、サービスを提供するのが市町村になっても、軽度者の生活援助サービス程度ならさほど大きな不都合はないのではないかと考えていた。生活援助サービスが提供される場面を何度も取材してきたが、ヘルパーの丁寧な仕事ぶりに感心すると同時に、我が家よりも丁寧な掃除や調理、銘柄まで指定される買い物といったサービスが自己負担数百円でできることに疑問を感じたのも事実だ。ネットスーパーを利用するなど、サービスを合理化することはいくらでもできるのではないかとも思った。
しかし、お二人の意見を聞くと問題はそう簡単なことではなかったようだ。介護保険制度は思ったよりも有効で、お二人に代表されるようなプロによって、世界に誇れるほどレベルの高いサービスが提供されている。志の高いプロが支えていることに、介護サービスを斜めから見ていた自分を恥じた。
それでも、介護保険制度を持続可能なものにするためには、ある程度の痛みはあってしかるべきだとも感じている。少子超高齢化社会が進む中、介護保険にかかる財源はひっ迫している。今の手厚い介護サービスのままでは、これから先、若い世代にしわ寄せがいくのは目に見えているのだ。少子化でサービスの担い手も不足しているし、人手不足はますます深刻になるだろう。今回話を聞いたお二人も、この点については同様の考えだった。
ただ本当に必要な人に、必要なサービスが提供されなくなっては、そもそも何のための介護保険制度なのか、ということにもなりかねない。いずれ、誰もが老いて、人の手を借りなければ生活できなくなるのだ。介護保険改悪反対を声高に叫ぶばかりでなく、先を見据えて冷静に議論することが大切なのではないだろうか。
(坂口鈴香)