コラム
高橋ユキ【悪女の履歴書】
出刃包丁とナタで男をバラバラに――結婚誓った内妻の告白【荒川放水路バラバラ殺人事件・前編】
2019/09/15 18:00
富美子はのちに、手記を公開しているが、そこには伊藤への当時の思いがこう書き綴られていた。
「私の家は以前、相当手広く商売をやっていましたが、戦争と同時に不運が続き、ついに田舎に引っ込んでしまってろくな収入もなく、生活は苦しい最中でした。それだけに私は、自分の身の始末より『家のために働かねば』と言う気持ちが先に立ち、結婚問題などあまり真剣に考えなかったというのが、その頃の偽らぬ心情でした。
しかしその反面、伊藤のプロポーズを受けて以来、彼を慕う気持ちが1日1日と高まっていたことが事実で、私が彼との結婚を固く心に誓ったのは、それから間もなくの事です」
ところが一緒に暮らし始めると、それまでのまっすぐで真面目な伊藤の印象とは異なる顔が見え始める。
――後編につづく(9月16日更新)
最終更新:2019/09/15 18:00